2012年12月26日

治験メンバーを勇気づける

キャサリン「花子、どう?元気?」

花子「はい。元気ですよ。どうしたんですか?」

キャサリン「実はね、このプロジェクトが縮小されることになったの。」

花子「え!そうなんですか?」

キャサリン「そう。それで、MさんとLさん、Sさんが別のプロジェクトに異動して、このプロジェクトは花子と太郎にやってもらうことになった。」

花子「え〜〜!!無理ですよ、そんなの!!」

キャサリン「そうね。難しいわね。でも、これは決定事項。」

花子「だって、今でも私、施設を7つもっていて大変なのに、3人も減ったら、どうなるんですか?」

キャサリン「今日から、花子には20施設を担当してもらいたいの。」

花子「20施設?無理です!絶対に!」

キャサリン「ねぇ花子。あなた、モニターになって何年になる?」

花子「3年です。」

キャサリン「1年目のころのこと、覚えている?」

花子「えぇ。肺炎の治験でした。」

キャサリン「どうだった?」

花子「大変でした。急性期の肺炎の治験なので、なかなか患者が集まらなくて。」

キャサリン「でも、開発期限は守れたわよね?」

花子「はい。なんとか。」

キャサリン「この会社に入って、何回、「絶対に無理!」って思ったことある?」

花子「・・・・4、5回かな。」

キャサリン「結果的に駄目だったことはある?」

花子「・・・・いいえ。」

キャサリン「今回もね。大丈夫。施設が20だと出張が大変だけど、もともとオーファンだから、患者さんの人数自体は少ないから、総数としたらひとりあたりの担当は肺炎の治験の時と同じくらいよ。」

花子「・・・・まぁ、そうですね。」

キャサリン「それに、教育担当のおじさん達やQCの人たち、それに他にも何人か助っ人の伝手があるから、それであなたの負担を少しでも減らせると思う。」

花子「そうなんですか。」

キャサリン「あとね。今回は半年の短期勝負で決めて、それが終わったら、1ヶ月の特別休暇をもらえることをホーライに約束させたから。」

花子「じゃ、半年だけ必死になればいいんですね?」

キャサリン「そう。この半年だけ。」

花子「わかりました。でも、今でも患者を集めるのに苦労しているのに、どうやって半年で集めるんですか?」

キャサリン「それは、これから私が考えるわ。」

花子「分かりました。」

キャサリン「じゃ、お願いね。ありがとう。あなたのこと、期待しているわ。」



(続く)



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2012年12月24日

キャサリンの危機!

今週の物語の前に、ご連絡を。

国際共同治験を担当して、モニタリング報告書を英語で作成しなければならない、というような人に参考になる本の紹介です。

国際共同治験で「モニタリング報告書」を英語で書く時に参考になる本の紹介です。


★★★ 国際共同治験でモニターが英語のモニタリング報告書等を作成する場合に参考になる本。★★★


●「グローバル治験で必要となるモニター英語」・・・基本的、入門者用に適している。
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864280231/horaihonoyomu-22/ref=nosim/

あるいは、下記
   ↓
http://www.science-t.com/st/cont/id/16656

プレゼンのコツもあり。入門者用。

英文の書き方を「化学反応」のように分析して、英文を組み立てるコツが書かれています。

また、「基本的な英単語」を使って英語のモニタリング報告書を書くための事例も豊富です。




●「医薬品開発ー承認申請ー市販後業務のための 英単語・英語表現」・・・入門者用
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840740720/horaihonoyomu-22/ref=nosim/


この本はどちらかと言うと「有害事象」や「副作用」を報告する場合に適した事例が多い。

上記の本と同様に「基本的な英単語」とその事例が記載されていますので、英語のモニタリング報告書を記載するときに役立ちます。




●「国際共同治験Q&Aと英文モニタリング報告書の書き方例」・・・難しい。上級者用。長い文章作成用。
   ↓
http://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook/

これはちょっと難しいかな。

1日のモニタリングの流れに沿った、長めの英語のモニタリング報告書を書く際に参考になります。



以上が国際共同治験を担当したモニター等が英語のモニタリング報告書を書く時に参考になる本です。

英語のモニタリング報告書作成以外に、一般的に英文を作成する際に役立つ本は以下のものです。

●英語ライティングルールブック 第2版 正しく伝えるための文法・語法・句読法
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4887245165/horaihonoyomu-22/ref=nosim/




次にビジネス英会話に役立つ本をご紹介致します。



●「英会話ペラペラビジネス」
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757405804/horaihonoyomu-22/ref=nosim/

ビジネス英語だけでなく日常の英会話全般に役立つ本です。

まずはここにあるフレーズを全て「頭ではなく口」で暗記すること。(音読を繰り返す。)






●もっとビジネスに特化するなら

以下にご紹介する本は呆れるほど薄い本なのですが、とにかく「基本的な英会話のフレーズ集」です。

「薄い本」なので、途中で挫折しない、というのが大事なのです。

以下の本の中で紹介しているキーフレーズを全て「頭ではなく口」で暗記してください。

そのためには、キーフレーズを30回以上、音読します。(できたら80回以上。)

すると、英文が「考えなくても口に出てくる」というような状態になれます。


僕が実際に社内の「英会話」の講義や「メルマガ」で利用している本です。


●「ビジネス英語 会話編」(入門用)
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901429590/horaihonoyomu-22/ref=nosim/


ビジネスシーンに仕える超基本的な英会話のフレーズ集です。

この本に出てくる全てのフレーズを「頭ではなく口」で暗記すること。(音読を繰り返す。)

この「音読を繰り返す」は英語をモノにする基本でコツです。(以下同様。)


●「速効ビジネス英語プレゼンテーション編」(中級者用)
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757411863/horaihonoyomu-22/ref=nosim/



●「50の超シンプル表現だけで乗り切れる速効ビジネス英語 会議編」(中級者用)
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757412312/horaihonoyomu-22/ref=nosim/



●「速攻ビジネス英語 ディスカッション編」(中級者用)
   ↓
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757411871/horaihonoyomu-22/ref=nosim/



以上、僕が実際に社内の「ビジネス英会話入門」という研修で実際に使った本のご紹介でした。

また、下記のメルマガ(気楽​に1分〜脳に染み込む​医学論文・頻出単語!)は必見です! とても役立ちます。(もちろん、無料!)
  ↓
http://medieigo.com/list/mm/mailmagazine


では、今週の物語に入ります。



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ホーライ「やぁ、キャサリン、突然、呼び出してゴメン。」

デーモン「キャサリン、調子はどう?」

キャサリン「え。まぁまぁよ。どういうこと?突然の呼び出しって。」

ホーライ「きみもご存じのとおり、ここ3年間、我が社の利益はよくない。それで開発プロジェクトの見直しを行った。」

キャサリン「それで?」

ホーライ「それで、プロジェクトの開発優先順位でトップは「肝機能障害治療薬」を持ってきて、次に「糖尿病」にして、きみのプロジェクトは残念ながら、優先順位を大幅に下げた。」

キャサリン「どいうこと?具体的にはどうなるの?」

デーモン「きみが担当しているオーファンドラッグのHORAI01の予算は半減。モニターは今、5人いるけれど、そのうち2人を「肝機能」に、1人を「糖尿病」に異動してもらいたいんだ。誰を異動させるかの人選はきみに任せる。」」

キャサリン「え!!モニターがたった2人で開発しろって言うの?そして予算は半減? 信じられない。これはオーファンドラッグなのよ! ホーライ、あなた、悪魔に心を売ったの?」

ホーライ「これは決定事項なんだ。ただ、開発期間は1年の予定だったけれど、2年に延長していい。」

キャサリン「分かった!・・・・・じゃ、開発を半年で終わらせるから、新薬承認申請後に、モニターたちに特別休暇を1ヶ月ちょうだい。」

ホーライ「いいよ。もし、半年で治験が終わったらね。以上だ。じゃ、解散。」





デーモン「キャサリン、落ち着け!」

キャサリン「落ち着いているわよ!」

デーモン「いや、落ち着いていないな。治験を半年で終わらせるなんて、狂気の沙汰だぜ。」

キャサリン「あのさ、1年の予定が2年になった場合、モニターのやる気は緊張すると思う?弛緩すると思う?」

デーモン「まぁ、弛緩するわな。」

キャサリン「デーモン、私たち、これまで親友だったわね?」

デーモン「まぁね。」

キャサリン「これからも、きっと、そうよね?」

デーモン「もちろん。」

キャサリン「それで、お願いがあるの。」

デーモン「何?」

キャサリン「モニターの教育担当をやっているおじさんたちが3人いるわよね。」

デーモン「あぁ。飲み友達だ。」

キャサリン「あの人たちに、治験の手伝いをお願いして欲しいの。」

デーモン「え?彼らにやらせるの?」

キャサリン「簡単な、IRBの申請資料作成とか、SDVの手伝いを半年でいいから、時々、手伝って欲しいの。」

デーモン「なるほど。半年限定なら受け入れやすいかも。それで、半年にしたのか。まぁ、説得してみるよ。でも、彼らにできるかな? それにモニターの資格があったけ?」

キャサリン「あのさ。SDVひとつもできないで、モニターの教育担当やっているの? モニターの認定の権限はSOPではあなたにあるでしょ。今日中に認定して。」

デーモン「了解。」

キャサリン「私のほうはQCのマリアンに頼んで1人だけでもいいから、やっぱり簡単な資料作成をお願いするつもり。」

デーモン「うん。あと、製販後の部署にも1人ぐらい、手伝いができそうな奴を知っているから、俺から頼んでみるよ。」

キャサリン「あとね、異動してもらうのはMとLとSにして、残ってもらうのは花子と太郎にするわ。」

デーモン「え!? いいのか? 花子はまだモニター歴3年だし、太郎だって5年だ。むしろベテランのLとかを残したほうがいいんじゃないのか?」

キャサリン「いえ。半年の勝負だから、体力勝負なのよ。若い方がいいわ。それに花子も太郎もあなたが思っている以上に優秀よ。これから二人を呼んで説明するわ。」

デーモン「でも、半年でオーファンの患者を集められるのか?」

キャサリン「それについては、ちょっとしたアイデアがあるの。」


(続く)
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2012年12月21日

経口血糖降下薬:「フェーズ3」と「長期投与試験」

今週は「『経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」です。
    ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-rinjyu-hyouka-guideline.pdf


今日は「フェーズ3」と「長期投与試験」についてです。


「フェーズ3」と「長期投与試験」について、次のように解説されています。
  ↓
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経口血糖降下薬における第3相試験を大きく分けると単独療法における有効性、安全性を評価するための試験と他の経口血糖降下薬との併用療法における主に安全性を評価するための試験に分類される。

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この「他の経口血糖降下薬との併用療法における主に安全性を評価するための試験」が最大の特徴です。



まず、普通の「フェーズ3」については次のように記載されています。
  ↓
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3-1. 単独療法試験

3-1-1 無作為化二重盲検群間比較試験

(1) 目的

第3相試験は、第2相試験により明確にされた適応、用法・用量等に基づいて、 治験薬の有用性をより客観的に検証することを目的とする。

このため、適切な対照薬を選び二重盲検法による群間比較試験を行う。

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まぁ、ここまでは普通ですね。

治験期間は長めになります。
  ↓
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(5) 試験期間

投与期間は治験薬の有効性、安全性を評価するに足る十分な期間が必要である。

HbA1cを主要評価項目とする場合は、少なくとも12週は必要であり、原則として24週が望ましい。

また、適切な観察期間も設定する。

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う〜〜ん24週(6ヶ月))プラス観察期間(1ヶ月ぐらい)ですね。

このように長い治験期間の場合、「ドロップアウト」する患者さんが多くなるので、難しいところです。



次に「普通」の「長期投与試験」についてです。
  ↓
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3-1-2. 長期投与試験

経口血糖降下薬の性質上、長期にわたる投与が一般的であるので、長期投与の安全性、有効性の確認が重要である。

長期投与試験は一般的に非盲検法により、第3相比較試験に並行又は継続して実施される。

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ここで素朴な疑問として「長期投与試験は一般的に非盲検法」とありますが、何故、長期投与試験は「非盲検法」なのか?

逆に「群間対照試験」では「ブラインド」なのか?

「対照試験」では「対照薬」と「治験薬」を比較するのが目的ですので、どちらかに「バイアス(先入観・偏り)」がかかるとまずいですよね。

でも、「長期投与試験」は通常「対照薬」がないので、偏りがかかりようがないので「非盲検法」でよいというわけです。




さて、評価項目は「安全性」で試験期間が1年というのも、他の分野の治験薬と同様です。
  ↓
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(4) 評価項目

主要評価項目は治験薬の安全性とし、副次評価項目として有効性(HbA1c等)を評価する。


(5) 試験期間

投与期間は、無作為化二重盲検群間比較試験と並行して長期投与試験を実施する場合は1年間以上、無作為化二重盲検群間比較試験から継続する場合は両試 験で合わせて1年間以上とする。

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ここまではいいのですが、次からが「経口血糖降下薬のガイドライン」の最大の特徴です。
  ↓
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3-2. 併用療法長期投与試験(非盲検併用療法長期投与試験)

(1) 目的

薬理学的作用機序により大別した既承認の経口血糖降下薬と治験薬を長期間併用した場合の安全性及び有効性を評価することを目的とする。

そのため、各々の既承認の経口血糖降下薬と治験薬の2剤併用療法(医療現場で併用が想定される組み合わせ)について、まとめて一つの非盲検併用療法長期投与試験として実施する。

治験薬と理論上併用が可能であり、実臨床において併用が想定される全ての被併用薬群*との組み合わせが推奨される。

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これですね!!

「併用療法の長期投与試験」がガイドラインで義務付けられています。

これが大変そう!!

しかも、「実臨床において併用が想定される全ての被併用薬群*」ですよ。


この「*」は次のようになります。
  ↓
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*ここでいう被併用薬群とは各種経口血糖降下薬の種類別に群をわけたものを指す。

(例えばSU薬群、ビグアナイド薬群、α−グルコシダーゼ阻害薬群など。)

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他の領域での治験では「長期投与試験」は下記のガイドラインのように「6か月、300例」のデータで製造販売承認申請ができます。

で、「1年、100例」のデータは承認前までに提出すればいいとなっています。

「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について」
  ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e1_95_5_24.pdf
  ↓
■■■■■■■■■■■■■■

8.通常は,6カ月間投与して得られた成績をもって当該医薬品の承認申請を行うことが可能である。

その場合は,12カ月間投与して得られた成績を承認前の可能な限り早い時点に追加提出しなければならない。

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ところが!!

「経口血糖降下薬」では次のようになっています。
  ↓
「「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について」(事務連絡:平成22年7月9日)。
  ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-qa.pdf
  ↓
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Q12

効能・効果の記載は、「2型糖尿病」とするのが適当とされているが、今後、従来のような効能・効果の記載は認められず、併用療法長期投与試験成績の提出が必須と考えるのか。

また、その場合の併用療法長期投与試験成績の提出時期はどのように考えたらよいか。



A12

本ガイドラインに従って新規の経口血糖降下薬の臨床開発を行い承認申請する場合には、併用療法長期投与試験を含めて必要な臨床試験を実施した上で、効能・効果を「2型糖尿病」と設定することが原則であり、当該試験成績を含めた臨床データパッケージで承認申請する必要がある。

また、併用療法長期投与試験では、既承認の経口血糖降下薬と治験薬を長期間併用した場合の安全性及び有効性を評価することを目的としていることから、当該試験が終了し、当該試験の成績が揃った時点でなければ、その安全性及び有効性を評価することはできないため、最初に併用療法長期投与試験以外のデータを用いて申請し、申請後に当該長期試験のデータを追加提出することは受け入れられない。

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上記のQ&Aを読むと、私の理解では「併用療法の長期投与試験」の結果が出てからでないと製造販売承認申請できないんですね。


いや〜〜!

これは大変だ!!

疾患領域によって、治験のやり方も様々ですね。

う〜〜ん、勉強になるな。



●ハードボイルド・ワンダーランド日記
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2012年12月20日

経口血糖降下薬:フェーズ2

今週は「『経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」です。
    ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-rinjyu-hyouka-guideline.pdf


今日はフェーズ2から始めます。
  ↓
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第2相試験は、2型糖尿病患者を対象として、治験薬の有効性、安全性、用法・用量、血糖降下作用の用量反応関係などを検討することを目的とする臨床試験である。

第2相試験は通常、患者を対象に有効性と安全性を探索する前期第2相試験と第3相試験の用法・用量を決定する後期第2相試験に分けられる。

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話は「血糖降下薬」から離れますが、上記の「前期第2相試験」と「後期第2相試験」という名前を聞いたことが無い、という人が若い人には多いかもしれませんね。

最近「フェーズ2」って「探索試験」という呼び名をよく使いますからね。

昔はよくこの「前期」「後期」という言葉を使いました。

ついでに、「前期第2相試験」を「フェーズ2a」、「後期第2相試験」を「フェーズ2b」と呼ぶこともあります。


さて、前期第2相試験では、初めて「糖尿病」の患者に治験薬を投与することになります。

対象は「2型糖尿病患者で、進行した合併症がなく、状態が安定した成人を対象とする。」となります。

プライマリーエンドポイントは「HbA1c」です。

それ以外としては下記のように記載されています。
  ↓
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(4) 評価項目

HbA1c、FPG、食事負荷後血糖(AUC、2時間値など)、1,5-AG、グリコアルブミンなどがあげられるが、治験薬の特性、投与期間などを考慮し、適当と思われるものを選択する。

場合によっては75gOGTTも評価項目になりうる。

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治験期間(投与期間)は下記のように長くなります。
  ↓
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(5) 期間

投与開始前のデータを収集する目的と、できるだけ安定した血糖コントロール 状態で治療期に移行するために、適切な観察期間をおく必要がある。

投与期間は治験薬の特性、評価項目などにより有効性の探索的な検討ができる期間を設定する(例:評価項目が食事負荷後の血糖AUCであれば2週間程度、グリコアルブミンであれば1ヶ月程度、HbA1cであれば3ヶ月程度など)。

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投与期間(観察期間)が長くなるのは「HbA1c」が、そもそも「過去1〜2か月」の血糖値を示すからですね。

それと特徴的なのが「適切な観察期間をおく必要がある」です。

これは安定した血糖値を測定するためです。

ベースの「血糖値」がしっかりしていないと、治験薬の効果が「あやふや」になるからですね。

「対照薬」は「プラセボ」です。




さて、「後期第2相試験」です。

この試験の目的は方法は、他の分野の治験薬と同様です。

フェーズ3に使用する治験薬の投与量を決めるためにドーズをふって「至適用量」を決めることです。


治験期間は次のように規定されています。
  ↓
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HbA1cを主要評価項目とする場合、原則として投与期間は尐なくとも12週間は必要である。また、適切な観察期間を設定する。

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最低でも12週間(3か月)ですね。

また、観察期間も含めるとトータルで4か月ぐらいになります。



糖尿病は「食事療法」や「運動療法」が基本になりますので、これらが治験期間中、一定にするのが難しそう。
  ↓
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(6) 試験計画

原則、無作為化二重盲検群間比較試験とする。

食事療法・運動療法の大きな変更は治験薬の評価に多大な影響をおよぼす可能性があるため、試験期間を通じて出来るだけ食事療法・運動療法の内容及び遵守状況が一定になるよう留意する。

また、被験薬の用量として、3群以上を設定することが望ましい。

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さて、明日はフェーズ3ですが、これが実に、「経口血糖降下薬の臨床評価ガイドライン」の最大の特徴が出てきます。


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2012年12月19日

経口血糖降下薬:評価方法

今週は「『経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」です。
    ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-rinjyu-hyouka-guideline.pdf


今日から、いよいよ、本陣に突入です。

「経口血糖降下薬の有効性の評価方法」です。
  ↓
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(3) 臨床試験の評価において推奨される観察項目

経口血糖降下薬は血糖コントロールをできるだけ正常値に近づけることにより、合併症の発症・進展を抑制することを目的としている。

したがって、高度な糖代謝異常や合併症に伴う自覚症状や他覚所見については評価指標として適切ではない。

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ここが肝心です→「高度な糖代謝異常や合併症に伴う自覚症状や他覚所見については評価指標として適切ではない」

では、何を指標にすればいいのか?

それはこれらです。
  ↓
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●血糖コントロール指標:HbA1cが最も推奨される。

しかし、短期間の血糖コントロール指標としてグリコアルブミン、既に比較的良好な血糖コントロールが得られている症例における食後高血糖の指標として1,5-アンヒドログルシトール(以下「1,5-AG」という。)も有用な指標である。


●血糖値:早朝空腹時の血漿グルコース濃度(以下「FPG」という。)が安定した指標として推奨される。

食後血糖値を測定する場合は、標準食を用いて、食事開始後一定時間(60分、90分、120分など)の血糖値を測定する。

糖代謝異常が軽度の場合は、75g経口ブドウ糖負荷試験(以下「75gOGTT」という。)で評価することも可能である。

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「ガイドライン」の後半を読むと分かるのですが、上記の特に「HbA1c」が新薬の重要な臨床評価指標になります。

「HbA1c」とは何か?

HbA1cは「ヘモグロビン・エイワンシー」と読みます。

高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖は体内の蛋白と結合します。

この際、赤血球の蛋白であるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンです。

このグリコヘモグロビンには何種類かあり、糖尿病と密接な関係を有するものが、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)です。



さらに、「臨床評価」の注意点も解説されています。

代表的な注意点だけ抜き書きします。
  ↓
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2型糖尿病の治療に関してはまず、食事療法、運動療法が基本であり、これらの治療のみでは血糖コントロール目標を達成できない場合に薬物療法の適応となる。

したがって、経口血糖降下薬の有効性の適正な評価のためには、食事療法、運動療法がすでに指導され、かつ直近の血糖コントロール状態が安定している症例を選択することが求められる。

さらに、被験薬の評価期間に被験者の食事療法、運動療法の内容及び遵守状況が安定していないと、血糖コントロール状態が不安定となり、適正な評価ができない原因となりうる。

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糖尿病では「食事療法、運動療法が基本」なのですね。

さらに血糖コントロールが不安定だと治験薬の評価も不安定になりますので、「食事療法、運動療法がすでに指導され、かつ直近の血糖コントロール状態が安定している症例を選択することが求められる」わけです。




では、次に「非臨床試験」のパートを見ましょう。
  ↓
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治験薬の効果を動物で評価する際には、ヒトへの外挿性を考慮し、適切な種類の動物を選択する。

また、モデル動物を用いて薬効を検討する際には、自然発症モデル動物としてはdb/dbマウス(肥満2型)、ob/obマウス(肥満2型)、KK-Ayマウス(肥満2型)、GKラット(非肥満2型)、Zucker fattyラット(肥満)、ZDFラット(肥満2型)、Wistar fattyラット(肥満2型)などがある。

人為的に作成されたモデル動物としては、新生児期にストレプトゾトシンの投与により誘発された非肥満2型糖尿病モデルラットがある。

これらのモデル動物や正常動物を用い、治験薬を単回及び反復投与した時の影響について、血漿グルコース濃度や血漿インスリン濃度、その他治験薬の作用機序を考慮した適切な薬理学的評価指標により検討する。

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糖尿病を自然発症するマウスが開発されているんですね。「へ〜!」です。

その他は、一般的な非臨床試験を実施します。



ではでは、いよいよ「臨床試験」です。

まず、フェーズ1ですが、これまた、通常の治験薬とほぼ同様です。

ただし、「血糖降下薬」ですので、次の検査が重要です。
  ↓
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なお試験を進めるにあたっては、被験者の安全の確保を常に優先するように心がけねばならない。

とりわけ低血糖の発現、重症化に対して十分に対応を心がけるべきである。

(中略)

糖代謝関連:血漿グルコース、血中インスリン、Cペプチド、グルカゴン、1,5-AG、グリコアルブミン、ケトン体等

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当然ながら、「糖代謝関連」が測定されますね。

ちなみにフェーズの対象者として「2型糖尿病患者」もありだと記載されています。
  ↓
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第T相試験は、非臨床試験から得られた情報をもとに、治験薬をはじめてヒトに適用する臨床試験の最初の段階である。

比較的限定された被験者(健康志願者、場合によっては2型糖尿病患者)が対象となり、治験薬のヒトにおける安全性の確認に重点がおかれる。

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それと、「血糖値」が大事ですので、「食事」等が厳しく統一されています。
  ↓
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(4) 試験方法

プラセボ投与群をおき、二重盲検法により試験を行う。原則として、試験期間を通じて被験者にはすべて同一の基準食を摂らせるものとする。

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上記について「「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について」(事務連絡:平成22年7月9日)にも解説があります。
  ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-qa.pdf
  ↓
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標準食としては、適切な評価を行うために、少なくとも同一試験の中では、同じ組成・熱量の食事を用いて実施していただきたい。

日本人の標準的な食事内容を反映したものが望ましいが、試験の目的や薬剤の特性に応じて組成を決定しても差し支えない。

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では、明日はフェーズ2についてです。



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