2012年11月08日

(4)治験のリスクマネジメントを考える

リスクマネジメント協会というのがある。
  ↓
http://www.arm.gr.jp/

このサイトに「リスクマネジメント」の意義等が書かれている。
  ↓
http://www.arm.gr.jp/rm_nyumon/index.html


*** 以下、引用 ***

リスクマネジメントの根本的な問題は、企業や事業に損失が発生した場合には、その企業が消滅する恐れがあること、事業が中断し、利潤を発生することすらなく損失を発生しつづける「無駄 な存在」になる可能性があることを、誰がどのように認識するのかという点にあると考えられます。

*************


上記の「企業」や「事業」という言葉を「治験」におきかえる。

まずは「治験」で「リスク」が現実化した場合、治験そのものが破たんするということを「認識」することが重要だ。


では「リスク」とは何か?

これは一般的に次のように定義されている。



**** Wikiより ****

「ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する概念」

**************



ここで重要なのは、「リスク」は「可能性」だということ。

ある事故が発生したら、それはもう「可能性」ではなく、実際に起きたことなので「リスク」とは言わないそれはもう「事故」だ。

治験で言うなら「GCP違反」だ。「プロトコル逸脱」だ。

これらの事故は起きてから対応しても遅い。

モニターや監査、QC、CRCは予め発生しうる・可能性のある「リスク」を予想・予測する必要がある。

そして、それを未然に防ぐ。

万が一、発生したとしても被害が最小限に抑えられるようにする。

たとえば、ひとりの被験者でGCP違反が発生したとしても、同様な違反を他の被験者では発生させない(被害を最小限に抑える)。

リスクの発生を防ぐ手段として「システム」で防ぐ方法がある。

簡単な例で言うと社内や院内でSOPを作る。

「ここでこういうステップを踏んでおかないと、こういう事故が発生する可能性がある。確率が高まる。だから、絶対に、こういうステップを踏んでね」ということだ。


「医療におけるリスクマネジメント」という資料もある。
   ↓
http://www.nsweb.biz/blog/


「治験におけるリスクマネジメント」で検索すると次のようなサイトがヒットする。
   ↓
http://jp.fujitsu.com/solutions/life/gcp/


まだ、治験におけるリスクマネジメントはそれほど研究されていないようだ。

JSQA(日本QA研究会)の今期の活動の中に次のものがある。
   ↓
http://www.jsqa.com/whats/Theme_GCP_20120830.pdf


*******************

各業務へのRisk-based Approach の導入

治験におけるrisk の洗い出し方、及び重要risk を回避しながら適正品質を達成する。

Risk-based Approach の各業務への導入方法の検討。

*******************


確かに、事前に可能性のある治験のリスクを洗い出すことからリスクマネジメント、リスクコントロールは始まる。

人はミスをするものだ、という前提に立ってモニタリングをする。

モニタリング部門は過去にどのようなGCP違反、プロトコル逸脱があったかを他のチームなどから情報収集する。

また、自分たちが担当するプロトコルやCRFを分析して、どこで逸脱が起こりやすいか「事前に」検討しておく。

そして、その逸脱を防ぐにはどのようなモニタリングを行えばいいかを決める。

CRCも同様だ。


場当たり式に、問題が発生したら、それに対応していると、全てが後手後手に回り、それがさらなる問題を発生させてしまう「負のスパイラル」に陥ってしまう。

大事なことは「事前に予測し、それを未然に防ぐシステムを構築すること」だ。

プロトコルで特殊な検査があったり、忘れられそうな検査があった場合、必ず3日前には自動的にメールが治験責任医師や治験分担医師、CRCに配信されるシステムを作っておく。


iPadを立ち上げると、今日、実施すべきプロトコルの項目が自動的に表示される。

治験薬の誤投与が起こらないように、事前に治験薬の箱と被験者識別コードにバーコードを貼り付けておく。


そもそもプロトコル逸脱が発生しやすい非現実的なプロトコルを作らない、ということも大事だ。

CRFのデザインも、プロトコル逸脱を防ぐように作成する。


大事なことは「リスク」は「可能性」だということ。

その可能性が現実化する確率をいかにして少しでも低くするかが、治験におけるリスクマネジメントだ。



「女房が宇宙を飛んだ」という本がある。

これは日本人女性として初めて宇宙に行った向井千秋さんの旦那が書いた本だけど、この中に「NASA」の徹底したリスクマネジメントのことが書かれている。

NASAの職員が宇宙飛行士たちに何が不安かを尋ねる。

たとえば飛行士が「シャトルが飛び立った瞬間に爆発したら、僕らは逃げることができるのか」と心配すると(リスクを感じると)、そういうリスクに対する対応方法を逐一、考えて飛行士に提示していく、というものだ。

こういうやりとりをシャトルが飛び立つ瞬間まで繰り返し、繰り返し、行う。

何故なら、飛行士の命がかかっているからだ。


治験だって患者の命がかかっている。

NASAと同じリスクマネジメントをしない理由があるだろうか?




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2012年11月07日

(3)ITを駆使しよう

第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2012 会議録の中に下記の資料がある。

事務局の苦労を解消するIRB電子化システムの現状

iPadを利用したIRB審査資料電子化の実践

IRB資料の電子ファイル授受に関する製薬協の考え

『電磁的記録への第一歩 〜電子データはどれが原本?〜』


これらの資料の共通項は「IT」だ。

製薬協の●「治験119」でも「IT絡み」の質問が出始めた。

上記の「治験119」中では、例えば以下のこと。

●質問番号:2007-25 治験審査委員会審査資料の電子化

●質問番号:2011-20 他の医療機関と情報共有している電子カルテ上への治験関連情報の記録・格納

●質問番号:2011-41 インターネットでの被験者募集

●質問番号:2011-42 インターネットでの被験者募集(その2)

●質問番号:2011-50 スキャナで電子化された署名済み同意書の取扱い

●質問番号:2011-58 テレビ会議による治験審査委員会の開催

●質問番号:2012-29 治験審査委員会審査資料の電子化(その2)



僕が社会人として働き始めた1980年代初頭、会社にはパソコンが数台しかなかった。

そんな「古き良き時代」は遠く過ぎ去り、もう元には戻れない。

それがいいことなのか悪いことなのかは別にして、パソコンやメールの無かった時代には戻れない。

今から、思うと、当時(パソコンの無かった時代)、どうやって仕事をしていたんだろう?と思ってしまう。

今では僕らは1日のうち「25時間」はパソコンやタブレットやスマホに向かっている。

だったら、それらを賢く使う。



話は飛びますが、先日、楽天からいきなり「kobo」が送られてきた。

僕は何も頼んでいないのに。

この「kobo」に対するハードの費用は一切、無料。

試しに使ってみた。

「青空文庫」で公開している本は無料でダウンロードできる。

すぐに僕は「青空文庫」の50冊ほどを「kobo」にダウンロードした。

普段、僕は通勤時間に読む本として2冊は鞄に入れている。

とても50冊も鞄に入れられない。(コロコロに入れるなら別だが。)

それが、背広の裏ポケットに入る。

これは「活字中毒」の僕には福音だ。

この楽天のなりふりかまわない戦略(無料で、強引に「kobo」を送ってくる)に、まんまとはまり、そのうち、僕は新書も有料で楽天からダウンロードしそうだ。



話は戻ります。

「手書き」の時代が去った現代は、ITを賢く使いましょう。

たとえば、僕が発刊している●「日刊GCPメルマガ」では、毎日、医学、治験関係のニュースを載せている。

そのニュースはどうやって集めているかというとグーグルの「アラート」機能を使っている。
  ↓
http://www.google.co.jp/alerts?hl=ja

このアラート機能に50個ほどのキーワードを登録している。

たとえば「治験」とか「GCP」とか「臨床試験」とか「糖尿病」「抗がん剤 治験」「新薬」「創薬」「モニター」「医療イノベーション」「国際共同治験」「日本製薬工業協会」「総合機構」など等。

このアラート機能を使うと、自動的に指定したメールアドレスにグーグルが検索した記事を送ってくる。

だから、今、上に「国際共同治験」なんていう言葉を書いたので、このブログがアラート機能から送られてくるはずだ。


ちなみに「GCP」としては、「創価大学のGlobal Citizenship Program」のニュースがよく来る。
      ↓
http://sgcp.soka.ac.jp/

「新薬」では「日本新薬」さんの野球チームの活躍がよく送られてくる。

思わぬ発見があって面白い。

その他に医療系のニュース収集に活用しているのは「日本スリービー・サイエンティフィック 」のメルマガと「薬事日報社」のメルマガですね。

●日本スリービー・サイエンティフィック
     ↓
http://www.3bs.jp/mailmag/

●薬事日報社
 ↓
http://www.yakujinippo-mailnews.jp/


ついでに、医療英語に必須なのは下記のサイトのメルマガ(超おすすめ!)
  ↓
http://medieigo.com/list/mm/mailmagazine


まぁ、そんなこんなのニュースから僕がピックアップして「日刊GCPメルマガ」に載せている。

リアルの会社では同じようにグーグルのアラート機能に日本のほとんどの製薬会社とCROの名称を登録して、会社の僕のメールアドレスに届くようにしている。

それらをピックアップして、1週間に1回、僕は臨床開発部署の全員にメルマガとして配信している。

ただし、大事なことは情報を収集することではない。

それらの情報から何を考えるかだ。

そこから、どう戦略を組み立てるかだ。



また、会社によっては積極的にツイッターやSNSを社内コミュニケーションツールとして活用している会社もある。
  ↓
http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/column/2012/0605.html


あるいは、会社の営業そのものにツイッターやSNSを利用している会社も多い。

iPadもMRの必携アイテムになりつつある。
  ↓
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20111007/370355/



「ホーライ製薬」の場合、今は、このSeeSaaが提供しているブログを中心に活動している。
  ↓
https://blog.seesaa.jp/

このブログはツイッターに同時に通知する機能がついているので、このブログを更新すると自動的に僕のツイッターで「つぶやく」ことができる。
  ↓
https://twitter.com/horai_japan



「お勧めのビジネス書」のブログも更新すると同様だ。


さらに、このツイッターには、自動的にfacebookに通知する機能がついているので、僕のツイッターからはfacebookの「ホーライ製薬」に投稿される。
  ↓
http://www.facebook.com/Horaiseiyaku


また、最近は「ニュース系」のサイトには「ツイッター」ボタンが付いているので、上記のアラート機能から送られてきたサイトで「これは使える」と思えるニュースは、「ツイッター」ボタンを押す。

すると、自動的に僕のツイッターで「つぶやく」。

それがまた、ツイッター経由でfacebookのホーライ製薬に投稿される・・・・・・と、訳の分からない人にはさっぱり分からない話だよね。

でも、それが現代です。

僕の活動が全て、facebookのホーライ製薬の集約されている。


厚生労働省のサイトや総合機構のサイトにもツイッターボタンとかついているといいと思うんだけれどね。(大学とかも。)

僕が言っているのは、公式のアカウントではなくて、閲覧者が押すと、その閲覧者のツイッターでつぶやけるやつね。

厚生労働省の公式のツイッターは下記。
  ↓
https://twitter.com/MHLWitter



ITは賢く使おう!

くれぐれも「炎上」には注意しましょうね。お互いに。



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2012年11月06日

(2)研修の限界と経験の重要性

研修で、こんなことをケーススタディでやった。

******************

ある重篤な有害事象が発生した。

当初、治験責任医師はこれを「副作用」として判断した。

しかし、モニターが、あるデータを根拠に「因果関係は否定できるのではないでしょか?」と説明したら、「たしかに」ということで因果関係が否定され「有害事象」になった。

ところが、数日たって、その医療機関から「因果関係は否定できない」となり「重篤な副作用」と報告書が送られてきた。

「あら?話が違うじゃないの」と電話で、その治験責任医師に連絡したら、その病院では副作用報告等の報告書は必ず診療部長の了承が必要で、その診療部長が「これは副作用だ」と判断し、その病院としては「因果関係が否定できる」という見解は出せないと言われた。

こんな時、あなたならどうする?

そもそも、これはどこが問題?

*****************


・・・・というような事例検討をやった。

これをまず新人モニターの答えさせると「病院のSOPを確認する。」とか「SOPが問題」という答えになった。

しょうがないよね。

つい2、3か月前までGCPやSOPの重要性をさんざん教えられてきたからね。

次に、ベテランモニターに答えさせると「因果関係がひっくり返ったことが問題」とまっすぐに問題の本質にたどり着く。

製薬会社としては1つでも副作用が少ない薬を開発しているので、ただの有害事象だったのが、副作用となると痛い。

もちろん、副作用が正しい判断で、それを無理矢理、有害事象にする、という話ではない。

一旦は、医師も因果関係を否定したのに、その上司の所でひっくり返ったという所が問題なのだ。(その上司の判断が正しいかどうかはまた、その次の問題。)


ここで言いたいのは、「研修」というのは特に事例検討というのは「経験不足」を補うためにやるのだが、ベテランモニターが問題の本質に、ズバッとまっすぐたどり着けるのは、それまでの「経験」がものを言う場合が多い。

もちろん、想定される範囲内の出来事だけではなく、全く未知の事故に遭遇した時も、正しい判断ができるように研修を組み立てるのだけれど、それでもそれを上回る想定外の事例が起こり、「現実」は常に「研修の想定」を大きく上回る。

これが「研修」の限界だ。

そして、研修でカバーできないことはOJTや日常業務の経験を通じて学ぶしかない。

ただし、どんなに経験があっても、考える習慣が無いモニターは、経験から何も学ばない。





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2012年11月03日

(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)

今週は「治験に関する徒然なるままに」です。


(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)

(2)研修の限界と経験の重要性

(3)ITを駆使しよう・ITは賢く使おう!

(4)治験のリスクマネジメントを考える

(5)自分で考える。自立する。自分の判断に基づいて行動する。(釜石の奇蹟)



今日の話題は(1)三度、アルコアについて(しつこいけれど)です。


第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議のサイトに当日の発表資料の一部が公開された。

第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2012 会議録

その中に「ALCOA実践セミナー」がある。

この「ALCOA実践セミナー」を見て、思ったのだが、やっぱり、アルコアについて理解・実践することって、大変だなということ。

このブログには簡単なアクセス解析のサービスがついていて、それを見ると、どんなキーワードで検索されて、この「ホーライ製薬」のブログにたどり着いたかが分かるようになっている。

それによると、圧倒的に「ALCOA」関係なのだ。

たとえば「ALCOA」「alcoa」「アルコア」「ALCOAとは」「ALCOA 治験」というキーワードだ。

確かに、グーグルで「alcoa 治験」を検索すると、このブログが一番、最初にヒットする。



話がちょっと横道にそれるけれど、グーグルの検索でさ、そのサイトの中身の適切さとか正確さも反映した検索結果が出ると便利だよね。

と書いたけれど、これは難しい。


何故ならば、例えばアインシュタインのE=mC2は適切で正しいと言える(今のところ)。

でも、このブログに書いているalcoaの説明が適切か、とか、正しいか、という判断は読む人によって違う。

「こんな説明、正しくない!」とか「あまい!」と思う人もいるだろうし、中には「これでいいんじゃないの」と思って頂いている人もいらっしゃるかもしれない。

何が正しいのか、適切なのか、というのは読んだ人の判断に負うところが多いから、グーグルでサイトの中身の適切性まで判断した検索結果を出すのは難しいよね。

だけど、そのうち、そういうことも判断できるアイデアや技術やアルゴリズムが出てくるかもしれない。


グーグルが出始めた時に、どういうサイトを上位に表示されるかのひとつの判断に「どれだけの数のサイトからリンクが張られているか」という基準があった。

そういう基準も、そのサイトの適切さの一種の判断にはなりうる。

ちなみに、大昔、まだネットの黎明期に、他人のサイトにリンクを張る場合は、その方にメールで連絡しましょう、それがネットのエチケット(ネチケット)です、なんて言われていた。

ところが、グーグルができてからは、「リンクフリー。連絡は不要」と書かれたサイトが多くなった。

それは、グーグルの上位に表示されたいからだね。

グーグルの検索結果の3ページ目以降は「ネット上に存在しないも同じ」と僕は思っている。

グーグルの検索結果の4ページ以降も調べる人って、多分、少ないだろうから。

「無人島の鳥は存在しない」なのだ。



横道が長くなりましたが、alcoaに戻ります。

alcoaを考える時に忘れてはいけないことは、alcoaの原則は、それだけ(原則だけ)が独立して存在しているわけではないということ。

alcoaの原則は、治験で言うならば、CRF(症例報告書)に記載されたデータの信頼性と正確さを保証するためにあることを忘れてはいけない。

CRFの記録のオリジナルはどれ?と連携させて考えないといけない。

必ず、それに連携して考える。

そこを忘れて、「alcoaとは」だけを考えると、どんどん深みにはまって、思考の迷路に入ってしまう。

何が何だか訳が分からなくなる。



CRFに記載されるデータに影響を与えると考えられるならば記録類で、その中でも、これが最初に記録される資料だなと思えたら、それがオリジナルだ。

たとえば、上記の「ALCOA実践セミナー」の資料の14ページ目に「集中測定の速報結果のFAX」と「最終版としてまとまったものが郵送」されてきた場合、どちらに医師のサインと日付がいるの?というものがある。

僕は、「速報」は暫定的で、測定機関が正式に証明できるのは郵送されてくる報告書ならば、そちら(郵送された報告書)にサインと日付があればいいと思う。

速報はあくまでも「参考」だからだ。


ここまではalcoaはCRFのデータの信頼性のため、という観点で述べてきたけれど、これを拡大して、治験のシステムの信頼性まで拡大すべきだと僕は思う。

たとえば、「治験薬管理表」を確認・訂正した場合は確認・訂正者のサインと日付が欲しいし、測定機器のメンテナンス記録を確認・訂正する場合も同様だ。

さらにさらに、こういうことって、治験に限らず、病院のシステムそのものにも必要なのではないだろうか。

医療が適切に提供されているシステムの中に組み込まれてもいいはずだ。

僕は弁護士ではないので、詳しくは分からないけれど、医療事故等でカルテやその他の諸々の医療に関する記録で「誰が、いつ確認・訂正したか分からない」ことがあるとまずくない?

全ての記録に誰が、いつ確認・訂正したのか、とか、誰が、いつ医学的判断したのか、ということの説明が医療裁判なんかでは要求されるんじゃないだろうか。

そういうことに対するリスクマネジメントとして、医療全体に、あるいは病院というシステムにalcoaの考え方を導入すべきだ。(もうしているのかな?)



僕はかつてGMPの世界で働いていたけれど、この世界では、全ての作業記録、分析作業記録等にサインと日付が必要だ。

このサインは簡単に、例えば、僕はイニシャルのATをくずして、ひと筆で書けるようにしていた。

だから、全ての書類にサインするとしても、1回につき1秒で済む。

ドイツ系製薬会社でGMP関係の仕事をしていた時は、SOPの承認欄として表紙にもちろん部長(ドイツ人)のサインが有ったが、そのドイツ人のボスは、SOPの全てのページに、自分のサインとして、「J」の一文字をサインしていた。



第12回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2012 会議録の中の講演4:原資料マネジメントのあり方 −Global監査の観点から−の9ページ目の最下段に「イニシャルや簡略署名を使用しては?」という記載がある。

まさに、そのとおりです。

なお、この「原資料マネジメントのあり方」の資料はよく読みましょう。

「原資料」と「原データ」についての考え方が分かります。

また、以下のスライドも熟読しましょう。

原資料マネジメントを再考する 〜質保証と効率の両立〜「総括」



さらに、同じ会議録に●不毛なお仕事にさようなら:安全性を理解して仕事にメリハリをつけよう!という資料がある。

この資料では「有害事象」についての考え方が特に素晴らしい。

この資料は若い人ほど、是非、読んでほしい。

これからの治験を変えるのは「あなた」だからだ。



蛇足ですが、「alcoa」も時間が立てば、ごく「普通」のことのように習慣化されると思う。

それも「形式」としてではなく「実践」として。

何故、そんなことが言えるかというと、どんな新しい「概念」も、最初は混乱がつきものだが、みんなが苦労すればするほど、定着することを身を持って知っているからだ。


今から10年ほど前、僕は日本QA研究会(JSQA)の「2−C」グループの幹事をやっていた。

そのグループの活動は「システム監査の技法」について検討することだった。

ICH-GCPが導入され「システム監査」という言葉が初めて、日本の治験の現場に登場した。

いったい、何をどうすればシステム監査なるものができるのか、現場は混乱した。

いろんな考え方が、治験依頼者ごとにあった。

それらを整理するような作業を「2−C」グループで2年間、検討し、システム監査の効果的なやり方を提案した。

活動の最後に、JSQAのGCP部会の人を集めて、当時としては画期的なことだったけれど、活動グループが主催して、「システム監査について」のパネルディスカッションをやった。

それから10年。

今では、ほとんどの会社の監査部署は「システム監査」を「普通」にやっている。

きっと、いつかは「alcoa」も「普通」に「実践」している時代が来ると僕は信じている。


蛇足の蛇足ですが、このJSQAの「2−C」グループの人たちとは、今でも1年に何回か、「飲み会」をやっている。

一緒に苦労すると結束力が高まるものだ。



ちなみに今、JSQAでは下記の活動をやっているようです。
   ↓
http://www.jsqa.com/whats/Theme_GCP_20120830.pdf





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ラベル:アルコア
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2012年11月02日

モニターがやるべきこと(疾患の勉強会をやる)

新しい治験プロジェクトに配属されたら、その疾患の勉強会をやろう!(自分が企画するのだ!!)

今まで、その疾患にはどのような治療薬があるのか、その治療薬にはどんなデメリット、副作用があるのか。

また、その疾患には「治療ガイドライン」があるのか。

たとえば、高血圧治療ガイドライン。
    ↓
http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/kouketuatu.html



あるいは(こっちが先か)「臨床評価ガイドライン」があるのか。

たとえば、抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン
    ↓
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/171101-b.pdf

これらに対して、担当する治験薬はどのようなことを提供できるのか。



競合他社の開発状況は?

競合他社のライバルとなる治験薬の情報はなかなか得られないが、たとえば、ここも活用する。
 ↓
http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/development/index.html

(上記のサイトはあまり更新されてないので、ちょっと使えないのが現実ですが。)

そのライバルとなる治験薬の特徴などは、信頼できる治験責任医師等から(こっそり)得られる場合もある。



話しは戻りますが、対象疾患の勉強会では、そもそも、何故、そのような疾患が発生してしまうのか、Wikipedia、ネット、論文、成書と、ありとあらゆるツールを駆使して勉強する。

結構、使えるのが「メルクマニュアル」。
  ↓
http://www.msd.co.jp/merckmanual/Pages/home.aspx


さらに、最近ではYouTubeも使える。

たとえば「胃潰瘍」について。
  ↓
http://www.youtube.com/watch?v=PlW6ZWTtxx8


モニターは対象疾患について治験責任医師等と「同等以上」に会話ができないといけない。

そのためには疾患や医学一般の知識が必要だ。

モニターは書類を運ぶだけの「伝書鳩」ではない。

そこを忘れないようにしようね。


こうして、治験の対象疾患の知識を増やしつつ、あらゆる疾患領域を渡る歩く、というのもモニターとしての生き方だし、ある特定の分野(例えば、がん領域とか中枢神経系とか)に特化したモニターとして生き残るという戦略もある。

ちなみに、製薬会社では得意とする領域があるので、あらゆる疾患とはいきにくいが、CROのほうが幅広く疾患を担当する確率が高いかもしれない。


今週の内容をまとめると以下のようになります。

初めて治験を担当するモニターの勉強方法。

●プロトコルを熟読する(逸脱しやすい個所を特定し、プロトコル逸脱の予防策を考える)

●治験薬概要書で治験薬の存在意義を確認する

●CRFのデータはどこから集めるのか全ての欄について検討する

●同意説明文書もしっかり読む

●担当する疾患領域を勉強する


ついでに「モニターへの道」というサイトを僕が作ってありますので、新人モニターの方は、そちらも参考にしてください。
  ↓
http://monitorhenomichi.web.fc2.com/index.html




■■■ ホーライ製薬のfacebook ■■■
      ↓
なまいきにfacebookがあります。
      ↓
http://www.facebook.com/Horaiseiyaku


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   ↓
https://twitter.com/horai_japan

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