2012年10月17日

新薬開発におけるブレークスルー(ワクチンの発明、免疫・抗体の研究)

10月9日に山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞し、また、ノーベル化学賞では「Gたんぱく質共役型受容体」の研究者のロバート・レフコウィッツ米デューク大教授と、ブライアン・コビルカ米スタンフォード大教授が受賞したということで、今週のホーライ製薬のテーマは「新薬開発のブレークスルー」です。

これまでの科学の歴史の中で、何が新薬開発にとって、ブレークスルーとなったかを見ていこう、というもの。



■■■ ワクチンの発明(1796年) ■■■

エドワード・ジェンナーが天然痘ワクチンを開発。

ジェンナーが医師として活動していた頃には、牛の乳搾りなどをして牛と接することによって自然に牛痘にかかった人間は、その後天然痘にかからないという農民の言い伝えがあった。

天然痘に比べると、牛痘ははるかに安全な病気であった。

ジェンナーはこれが天然痘の予防に使えないかと、1778年から18年にわたって研究を続け、1796年5月14日、ジェームズ・フィップスというジェンナーの使用人の子である8歳の少年に牛痘を接種した。

少年は若干の発熱と不快感を訴えたがその程度にとどまり、深刻な症状はなかった。

6週間後にジェンナーは少年に天然痘を接種したが少年は天然痘にはかからず、牛痘による天然痘予防法が成功した。

その後天然痘ワクチンは改良されて世界で使われ、1980年には天然痘の根絶が宣言された。


ジェンナーのワクチン発明後、ルイ・パスツールが病原体の培養を通じてこれを弱毒化すれば、その接種によって免疫が作られると理論的裏付けを与え、応用の道を開いたことによって、さまざまな感染症に対するワクチンが作られるようになった。

パスツールワクチン(1883年)をパスツールが開発。

ルイ・パスツールが微生物が病原体である可能性を示唆したとも言われている。

ただし、この業績はネットで調べると分かるけれど疑問視されている。



ちなみにパスツールは酒石酸の光学分割により初めてキラル分子の存在を実証。

光学異性体は重要な概念で、薬の世界でも光学異性体の一方が薬効を示し、もう一方は副作用を出す化合物があることはよく知られている。

例えば、サリドマイド。

市販のサリドマイドは等量のR体とS体が混ざったラセミ体として合成される。

開発された当時の技術では分離が難しく、ラセミ体のまま発売された。

後にR体は無害であるがS体は非常に高い催奇性をもっており高い頻度で胎児に異常をひき起こすとの報告がなされた。

現在の技術ではR体・S体の分離(光学分割)、および一方のみを選択的に合成(不斉合成)することも可能である。

ただし、R体のみを投与しても比較的速やかに(半減期566分)動物体内でラセミ化するという報告がある。

このため単純にR体が催眠作用のみを持ち、S体が催奇性だけを現すという報告は疑問視されている。

こういう光学異性体を特異的に合成する方法として「キラル触媒による不斉反応の研究」があり、この研究で野依 良治(のより りょうじ)が2001年にノーベル化学賞を受賞している。


ワクチンの発明から、「抗体」や「免疫」という概念に科学のメスが入った。



■■■ 免疫の発見(前史〜19世紀) ■■■


「免疫」の概念は数千年の間人類の興味を引いていた。

前史時代の病気に対する考えは、超自然的な力が原因で、神あるいは敵のそばで魂に尋ねてきた、悪い行いや悪魔の考えを神が罰する形が取られたものとされた。

ヒポクラテスと19世紀の間には科学的方法の基礎が作られ、病気は4つの気質(血、粘液(痰)、黄色胆汁、黒色胆汁)の1つが変化するかバランスが崩れることに帰せられた。

この期間に人気があったのは瘴気論(しょうきろん)である。

コレラや黒死病は"悪い空気"の有毒な形である瘴気によって起こるとされた。

誰でも瘴気に接触すると病気に罹った。


書いた記録に「免疫」概念が最初に現れるのは、アテネのトゥキディデスによってBC430年に書かれたものである。

彼は「病人や死にそうな人は病気から回復した人々によって手厚く看護された。なぜなら彼らは病気の経過が分かっており彼ら自身はもう心配はなかったから。そして以前病気に罹ったものは2回は罹らず死ぬことはない」と記した。

免疫(immunes)なる言葉がBC60年頃詩人マルクス・アンナエウス・ルカヌスによって詠まれた叙事詩『ファルサリア』中にも見受けられる。

彼は北アフリカ部族の蛇毒抵抗性を描写した。


特定の病気の病原体によって引き起こされる免疫(immunity)についての記述が最初に臨床的な視点でなされたのは、おそらくイスラムの医者アル・ラーズィーによって書かれた『Kitab fi al-jadari wa-al-hasbah』(天然痘および麻疹についての論文、翻訳1848年)だろう。

論文中、彼は天然痘と麻疹の臨床描写を行い、これらの特定の病気を起こすものに接触すると長続きする免疫immunityがつくことを示した(彼は免疫immunityと言う言葉を使わなかったのだが)。

しかし誕生後間もない科学である免疫学が、いかに細菌が病気を起こすか、そして感染後いかに人の体がさらに障害を受けないよう抵抗力を獲得するのかの説明を始めるまで、ルイ・パスツールによる病気の病原体説まで待たねばならなかった。

1796年エドワード・ジェンナーは死んでいないウイルスだが天然痘に対する免疫を誘導する牛痘を用いたより安全な接種法を導入した。

ジェンナーの取ったやり方の成功とそれが一般的に認められたことは、その後19世紀終わりにワクチン接種の性質の一般性がパスツールによって導き出され発展したことへつながった。






■■■ 抗体の発見(1890年) ■■■


北里 柴三郎は1889年に世界で初めて破傷風菌だけを取りだす破傷風菌純粋培養法に成功、1890年には破傷風菌抗毒素を発見し世界の医学界を驚嘆させた。

さらに血清療法という、菌体を少量ずつ動物に注射しながら血清中に抗体を生み出す画期的な手法を開発した。


ジフテリア・破傷風は人の体内で毒素を放出する。

この毒素が病気を引き起こしているわけだ。

そこで、彼はこの毒素をすこしづつ、段階的に量を増やしながら、うさぎに注射してみた。

天然痘の治療に人痘が接種され、ジェンナーが牛痘を開発して、天然痘の予防、治療に成功したことが引き金となり、病原菌を接種するという考えが普通のことになっていた。

すると、毒を接種されたうさぎの体内で、毒素を中和する不思議な働きをする物質が作られ始めた。

毒に対する抵抗力が生まれたわけだ。

そこで、注射した毒素を中和するように体内で生成された物質を、北里は毒に対抗する物質ということで、「抗毒素」と呼んだ。

この抗毒素こそ、今日の免疫学を誕生させた、といってもよい歴史的な大発見、「抗体」の発見だった。

一緒に研究していたベーリングは、この発見によりノーベル賞を受賞するが、北里は受賞しなかったのは有名(その後、このことに対して、いろんな説が出された。当時、東洋人は軽視されていた、とか)。


ところで、自然界は人間にとって何百万、何千万という「毒、異物」があるわけだけれど、それらの「毒、異物」が体内に入ると「抗体」ができる。

なぜ、抗体はそんなに数多くの異物に対応できるのだろうか?

これは長い間、謎のままだった。

この謎を解明したのが、利根川進だ。(1976年)

彼は、この功績で1987年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。(日本人として初めての生理学・医学賞。今回の山中伸弥が二人目になる。)

利根川進と立花隆が対談した「精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」は無茶苦茶おもしろい!!

しかし、話はそれるが、この本を読んで立花隆のすごさも実感した。

立花隆は文系の人だが、科学に対する研究・論評も尋常な域を出ている。
   ↓
「サル学の現在」

「宇宙からの帰還」

「地球外生命 9の論点」

「臨死体験」

「がん 生と死の謎に挑む」

「ランダムな世界を究める―物質と生命をつなぐ物理学の世界」


立花隆は物事の本質を突くのがうまく、科学の何が人類に貢献し、どこに問題が存在しているのかを一般の人に分かりやすい表現で示してくれる天才だ。


話は戻ります。

今、「抗体医薬」が注目されている。

抗体医薬品とは、生体がもつ免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品。

一つの抗体が一つの標的(抗原)だけを認識する特異性を利用している。

抗体医薬品は、副作用の少ない効果的な治療薬として注目されている。

ゲノム解析により、創薬のターゲットとなる抗原分子が特定されていくことで、抗体医薬の可能性が拡大していくことが期待されているというわけだ。

時間がある人は(無くても)次の資料を読んでおこう。
  ↓
●抗体医薬の現状と展望
  ↓
「抗体医薬の現状と展望」



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2012年10月16日

新薬開発におけるブレークスルー(病原菌・ウイルスの発見)

10月9日に山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞し、また、ノーベル化学賞では「Gたんぱく質共役型受容体」の研究者のロバート・レフコウィッツ米デューク大教授と、ブライアン・コビルカ米スタンフォード大教授が受賞したということで、今週のホーライ製薬のテーマは「新薬開発のブレークスルー」です。

これまでの科学の歴史の中で、何が新薬開発にとって、ブレークスルーとなったかを見ていこう、というもの。


■■■ 病原菌の発見(1876年) ■■■


ロベルト・コッホは1876年、炭疽菌の純粋培養に成功し、炭疽の病原体であることを証明した。

コッホは1905年にノーベル医学・生理学賞受賞。

このことによって細菌が動物の病原体であることを証明し、その証明指針であるコッホの原則(*)を提唱した。


コッホは炭疽菌、結核菌、コレラ菌の発見者である。

純粋培養や染色の方法を改善し、細菌培養法の基礎を確立した。

寒天培地やペトリ皿(シャーレ)は彼の研究室で発明され、その後今日に至るまで使い続けられている。



***** コッホの原則 *****

1. ある一定の病気には一定の微生物が見出されること

2. その微生物を分離できること

3. 分離した微生物を感受性のある動物に感染させて同じ病気を起こせること

4. そしてその病巣部から同じ微生物が分離されること

******************



病気が病原菌が原因と分かり、研究の対象がはっきりした。

ただし、微生物が病原体である可能性を最初に示唆したのはパスツールという説もある。

これにより、新薬の開発に直接、つながる研究ができるようになる。





■■■ ウイルスのの発見(1935年) ■■■


微生物もさることながら、ウイルスの発見も偉大だ。

ウイルスは生物なのか生物ではないのか。

ウイルスは細胞を構成単位としないが、遺伝子を有し、他の生物の細胞を利用して増殖できるという、生物の特徴を持っている。

現在でも自然科学は生物・生命の定義を行うことができておらず、便宜的に、細胞を構成単位とし、代謝、増殖できるものを生物と呼んでおり、細胞をもたないウイルスは、非細胞性生物または非生物として位置づけられる。

あるいは、生物というよりむしろ"生物学的存在"といわれる。

僕(ホーライ)も、ある意味インターネット上は「生物学的存在」かもしれない。(どういう意味?)


微生物学の歴史は、1674年にオランダのレーウェンフックが顕微鏡観察によって細菌を見出したことに始まり、その後1860年にフランスのルイ・パスツールが生物学や醸造学における意義を、1876年にドイツのロベルト・コッホが医学における意義を明らかにしたことで大きく展開した。

特にコッホが発見し提唱した「感染症が病原性細菌によって起きる」という考えが医学に与えた影響は大きく、それ以降、感染症の原因は寄生虫を除いて全て細菌によるものだと考えられていた。

1892年、タバコモザイク病の病原が細菌濾過器を通過しても感染性を失わないことをロシアのディミトリー・イワノフスキーが発見し、それが細菌よりも微小な顕微鏡では観察できない存在であることを報告した。

またこの研究とは別に、1898年にドイツのフリードリッヒ・レフラーとポール・フロッシュが口蹄疫の病原体の分離を試み、これが同様の存在であることをつきとめ、「filterable virus(濾過性病原体)」とも呼ばれた。

同じ年にオランダのマルティヌス・ベイエリンクはイワノフスキーと同様な研究を行って、同じように見出された未知の性質を持つ病原体を「Contagium vivum fluidum(生命を持った感染性の液体)」と呼んだ。



1935年にアメリカのウェンデル・スタンレーがタバコモザイクウイルスの結晶化に成功し、この結晶は感染能を持っていることを示した。

化学物質のように結晶化できる生物の存在は科学者に衝撃を与えた。

スタンレーはこの業績により1946年にノーベル化学賞を受賞した。

スタンレーはウイルスが自己触媒能をもつ巨大なタンパク質であるとしたが、翌年に少量のRNAが含まれることも示された。

当時は、病原体は能動的に病気を引き起こすと考えられていたので、分子ロボット(今で言うナノマシン)の様な物(ウイルス)で我々が病気になるという事に当時の科学者達は驚いた。

それでも当時はまだ、病原体であるには細菌ほどの複雑な構造、少なくとも自己のタンパク質をコードする遺伝子位は最低限持っていなくては病原体になりえない、と思われていた。

ハーシーとチェイスの実験は、バクテリオファージにおいてDNAが遺伝子の役割を持つことを明らかにし、これを契機にウイルスの繁殖、ひいてはウイルスの性質そのものの研究が進むようになった。

同時に、この実験は生物の遺伝子がDNAであることを示した。




HIV(Human Immunodeficiency Virus)は1983年に、パスツール研究所のリュック・モンタニエとフランソワーズ・バレシヌシらによってエイズ患者より発見され「LAV(Lymphadenopathy-associated virus)」と命名された。

1984年に、アメリカ国立衛生研究所(NIH)のロバート・ギャロらも分離に成功しており、「HTLV-III(Human T-lymphotropic virus type III)」と命名した。

最初の発見者を巡って、モンタニエとギャロの仏米の研究チームが長年にわたって対立し、1994年に両者が共に最初であるとして決着したが、長期の対立はエイズ治療薬の特許が絡むもので、治療薬の発売を遅らせないための政治的決着であった。

2008年10月6日、フランスのモンタニエとバレシヌシの2人がウイルスの発見者として、2008年のノーベル生理学・医学賞を授与された。

HIVの起源はカメルーンのチンパンジーという説が有力であり 、そこから人に感染して世界中に広まっていったと考えられている。

1981年にアメリカのロサンゼルスに住む同性愛男性に初めて発見され症例報告された。

ただし、これはエイズと正式に認定できる初めての例で、疑わしき症例は1950年代から報告されており、「やせ病」という疾患群が中部アフリカ各地で報告されていた。

1981年の症例報告後、わずか10年程度で感染者は世界中に100万人にまで広がっていった。



当初、アメリカでエイズが広がり始めたころ、原因不明の死の病に対する恐怖感に加えて、感染者に同性愛男性や麻薬の常習者が多かったことから感染者に対して社会的な偏見が持たれたことがあった。

現在は病原体としてHIVが同定され、異性間性行為による感染や出産時の母子感染も起こり得ることが知られるようになり、広く一般的な問題として受け止められている。

HIVは最初のAIDS症例報告の1981年からわずか2年後には発見され、さらにその3年後には満屋裕明により1985年、世界初のHIV治療薬「AZT」が開発された。

これは病気の報告から、原因発見、治療薬発明までの驚異的な、歴史的なスピードだった。

どれだけAIDSが社会的に注目されていたかということを示しているが、科学の発達ももちろん影響している。


今では正しく治療すればHIVに感染しても寿命を全うする人が多くなってきた。



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2012年10月13日

新薬開発におけるブレークスルー(DNAの構造決定)

10月9日に山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞し、また、ノーベル化学賞では「Gたんぱく質共役型受容体」の研究者のロバート・レフコウィッツ米デューク大教授と、ブライアン・コビルカ米スタンフォード大教授が受賞したということで、今週のホーライ製薬のテーマは「新薬開発のブレークスルー」です。

これまでの科学の歴史の中で、何が新薬開発にとって、ブレークスルーとなったかを見ていこう、というもの。

科学はあるブレークスルーが発見・発明されると飛躍的に発展する。

そして、ある時期、また停滞する。

ところが、そこにまた新たなブレークスルーがある、という歴史の繰り返しです。

(Breakthrough(ブレイクスルー、ブレークスルー)とは、進歩、前進、また一般にそれまで障壁となっていた事象の突破を意味する英単語。)




■■■ DNAの構造決定(1953年) ■■■

まず、僕が最初に選んだブレークスルーは「DNAの構造決定」(ワトソン・クリックの二重らせん」です。

この発見について、是非、読んで頂きたいのが「二重らせん」(J.D.ワトソン著)。
     ↓
「二重らせん」(J.D.ワトソン著)

二重らせんを発見した当の本人が、赤裸々に当時の科学者のデッドヒートを書いたこの本は無茶苦茶、面白い!!

この本を読むと、「科学者が、そういう行為をやっていいのか?」「それはフェアか?」「それ、反則でしょ!」と思わざるを得ない。

この本が発売されて、ワトソンとクリックの行動に対して賛否両論が噴出した。

それだけ、この本が面白いってことであり、それだけ売れたということだよね。

新しい理論や論文、本はオリジナリティが高くて強烈なモノほど、いろんな意見が出る。

もちろん反論も。(つまらない理論や論文、1本はただ黙殺されるだけだ。)

ワトソン博士は「二重らせん」構造を発見すると同時に、この「二重らせん」(J.D.ワトソン著)でも、天才的な文才を発揮するし、「有機化学」の教科書でも、その才能を開花させた。


「まえがき」が長くなったけれど、DNAの構造決定が、その後の20世紀から21世紀における「生物学の爆発」を呼んだ。

この発見が無ければ、山中教授のiPS細胞もなかったってことだ。


DNA の構造は、分子模型を構築する手法を用いて1953年にジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによって提唱された。(1953年)

このDNA分子模型の構築は、モーリス・ウィルキンスとロザリンド・フランクリンによってすすめられていたX線結晶構造解析の画像及び解析情報やエルヴィン・シャルガフによって示されていたDNA塩基存在比の法則などのDNAに関する既知情報をすべて満足させるように配慮しながら行われた。

1962年、DNA二重らせん構造に関する研究により、ワトソンとクリックはウィルキンスとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。

DNAが二重らせんであることから、DNAこそが遺伝子の基本であることが分かった。

このことから、様々なことが発見、発明され、それぞれが、また新薬開発のためのブレークスルーになる。

●DNAとRNAの役割の発見(DNA⇒RNA⇒タンパク質、というセントラルドグマ)

●DNAシークエンシングの発明(DNAを構成するヌクレオチドの結合順序(塩基配列)を決定すること)

●DNAの合成方法の確立

●DNAポリメラーゼの発見

●組み替えDNAによるタンパク質合成

●PCR法の発明

●ヒトのゲノム解析(2003年完了)


これらから「遺伝子工学」という言葉(学問)までできた。

僕もドイツ系の製薬会社で酵母に人間のある種のタンパク質をコードするDNAを組み込み、酵母にそのタンパク質を作らせるプラント立ち上げに関わった。

その酵母は万が一、工場の外に漏れたとしても天然では生きていけないように「生物学的封じ込め」という操作を施していた。

もちろん、外に漏れないようにプラントそのものが「物理的封じ込め」になるように設計されている。

ちなみに、酵母を培養するときに「曝気」を失敗すると、酵母が嫌気性発酵してしまい、アルコールを作っちゃんだよね。

時々、培養室の中がアルコール臭で満たされて、下戸の僕は二日酔い状態で分析作業を続けることがあった。



最初の遺伝子組換え医薬はヒトの「インスリン」で、アメリカで1982年に承認された。



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従来、インスリンは人工的に合成するのが難しいとされていた。

そこで、正常にインスリンを分泌するヒトの遺伝子を切り出し、大腸菌のプラスミド(環状の小さな二本鎖のDNA)に組み込む。

大腸菌に組み込まれた正常なヒトインスリン遺伝子が大腸菌中で働き出し、大腸菌がヒトインスリンをつくるようになる。

大腸菌は培養が極めて容易で増殖スピードが速いため、ヒトインスリン遺伝子を発現する大腸菌を大量培養すれば、大量のヒトインスリンを確保することが可能になる。


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1986年には最初のヒト用組換えワクチンであるB型肝炎ワクチンが承認された。

これ以後、多くの遺伝子組換えによる医薬・ワクチンが導入されている。

インターフェロンやエリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)、ヒト成長ホルモン、ゴリムマブ(抗リウマチ薬)、B型肝炎ワクチン等。

DNAの構造決定とゲノムプロジェクトは遺伝子研究にパラダイムシフトをもたらした。


遺伝子工学からは、細胞融合やクローン技術ができた。

遺伝子操作を施した研究用マウス(トランスジェニックマウス)の作成。

人間を対象とした遺伝子治療の試みなどがある。

1970年代初頭までに、DNAを特定の位置で切断する制限酵素、DNA断片をつなぎ合わせるDNAリガーゼ、DNAを細胞に導入する形質転換の技術が開発され、これらが組換えDNA技術の基礎となった。

さらに1980年代にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって目的とする遺伝子の複製が容易に行えるようになり、遺伝子工学はますます利用範囲を広げた。



がん遺伝子の発見も重要。

1911年に、ペイトン・ラウスにより、ニワトリに癌(肉腫)を発生させるウイルスが発見され、発見者の名をとりRous=ラウス肉腫ウイルス(レトロウイルス)と命名された。

その後の研究により、このウイルスには、自身の増殖に関する遺伝子以外に、細胞を癌化に導く遺伝子が存在することが判明した。

その遺伝子こそが、世界で初めて発見された、がん遺伝子=SRC(Sarcoma(肉腫)の意味)と呼ばれるものである。


今では、ありとあらゆる病気のもとになる遺伝子探索が行われている。

遺伝子の一塩基多型(SNPs)は一塩基の置換(点突然変異)によって生じた多型で、ここからテーラーメイドの治療(個人別の治療)も将来的には考えられている。


さらに今は「ポストゲノム」時代と呼ばれていて、プロテオーム解析(*)が盛んに行われている。

たとえば、病態と正常の細胞中のプロテオームを比較することで、疾患に関係しているタンパク質を見出すことが出来る。

*プロテオーム・・・細胞中のすべてのタンパク質をまとめてプロテオームと呼ぶ。



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2012年10月12日

チームワークと最後に組織人が求められるもの

今週は「組織の活性化方法」です。


今日は●(5)「チームワークを強化する」です。


チームとは、共通の目的、達成すべき目標、そのためのアプローチを共有し、連帯責任を果たせる補完的なスキルを備えた少人数の集合体である。

メンバーのタスクは現実には、複雑な依存関係になる場合が多いが、これらを典型的な関係に分類し、それぞれの特徴や、重要なポイントを知っておくことは、よいチームワークを維持するために役に立つと考えられる。


以下、代表的なものについて紹介する。


(1)加算型

メンバーは各々独立して仕事をし、その合計はチームの仕事量になる関係。テレアポをとるチームは、アポインター一人一人のアポイント量の合計が、チームの仕事量になる。大型店舗の販売員チームなどもこれに近い。


(2)分離型

メンバーは各々独立して同じ仕事をし、一人でも正しい結果が出たら、チームの目的が達成できる関係。トラブルの原因究明や、問題の解決などをチームで行う場合がこれに近い。


(3)結合型

グループのメンバー全員が自分の責任を果たして、はじめてチームの目的が達成される関係。

何人かで山登りをし、全員が登頂することがチームの目的達成というような場合であるが、実際の仕事では、このように全員が同じ仕事をするのではなく、分業していることがほとんどである。

その場合には、メンバー全員が、各々に与えられた分担を完遂することで、チームの目的が達成される。

結合型はさらに、メンバーのタスクの関係性に応じて次のように2つに分けることができる。

ここでは、結合I型と、結合II型ということにする。


結合I型は、自動車の製造ラインのように、前の工程の組み立てが終わったら、次の工程のメンバーに引き継いでいく、といったシーケンシャルな関係である。


結合II型は、あるメンバーの役割、仕事の内容や量が、他のメンバーの仕事の遂行によって、変わってくるという関係だ。

この型は、メンバーのタスクの関係性が、これまでで最も強いものになる。

もちろん、実際の仕事では、このよう型にきれい分類することはできない。

しかし、チームのタスクは、このような依存関係からなるサブタスクが組み合さってできており、それらをメンバーに割り当てることで、メンバーのタスクの依存関係に違いが生じる。

また、チームのタスクが全体として、これらの依存関係のひとつに近いと見ることができる場合がある。



次に、チームのパフォーマンスというものを考えてみよう。

チームのインプットは、メンバーの能力と努力量であり、アウトプットはチームに課せられた課題の達成度と考えることができる。

「チームワークがよくなると、1+1が2にも3にもなる」と耳にすることも多いが、これを言い換えると・・・・・・

チームのパフォーマンス>メンバーのパフォーマンスの合計

ということになる。


しかし、期待とは違い、このようなことにはならないのである。

たとえば綱引きを数人のメンバーからなるチームで行う、こんな実験がある。

事前に一人ひとりのメンバーの引く力を測っておき、それを100%とする。

これを2人で引かせて、その力を測ると、2人の合計の93%になってしまうのだ。

3人では85%になり、8人で引くとなんと48%と半分以下になってしまうのである。

 
すなわち、チームのパフォーマンス<メンバーのパフォーマンスの合計となってしまうのだ。

 
このような実験は、運動能力だけではなく、問題解決など知的な能力についても数多くされていて、同様の結果となっている。

この例は、前出のチームタスクの分類でいうと加算型だが、分離型のタスクについても同様なパフォーマンスの低下が明らかになっている。

分離型の場合には、メンバーの一人でも解決できればチームとして目的の達成ができるはずである。


つまり・・・・・・

 チームのパフォーマンス=最もすぐれたメンバーのパフォーマンス

・・・・・・ということになる。

 
しかしこれについても、期待を裏切る結果が出ている。

その実験では、被験者にまず個人でパズル問題を解き、回答を提出してもらう。

次に、5人のチームとなってチームとしての解を出す。

すると、最初に5人とも正解だったチームと、4人が正解で1人が間違っていたチームは、100%のチームが正解を出した。

しかし、正解者が3名いたチームが正解を出した割合は、100%には至らず96%であった。

さらに、正解者が2名のチームは92%、1名のチームは73%しか正解が出せなかったのである。

つまり、チームの中に正解者が1人いるにもかかわらず、正解を出せなかったチームが4つに1つあったわけである。

この現象は上記の式に反している。


『チームワークと仲良しとは関係がない』

目的意識を共有した時からチームワークがスタートする。




●チームワークを良くするために

チームの責任者になると、チームの状態が気になります。

集まりが悪い、話が活発化しない、仕事が進まない、仲が悪い−−など。
 

大抵の場合、まずコミュニケーションを良くしようと考えて、会食をしたり、レクリエーションをやったりしませんか?

 
ノミニケーションだけではチームワークは良くならない。

目的をもって集まったグループ(チーム)は、その目的にそった形で引張らなければ、決して活性化しない。

目的が難しいほどチームワークがうまくできる。

 
チームワークは目的が明確で、難しい方がうまく回ります。

メンバーが勝手に動いていても簡単にできてしまうような仕事ではチームワークを必要としないのです。



例えば、二人で荷物を運ぶ仕事を考えて見ましょう。

二人が上司に呼ばれて「このテーブルを物置に運んでくれ」と頼まれたとしましょう。

見ると一人で簡単に持てるような軽い小さなテーブルです。

こんな場合はチームワークを発揮する余地はほとんどありません。

どちらかが「俺がやっとくわ」と言ったら、「そんなら宜しく」で仕事が済んで終うのです。

「この机を物置に運んでくれ」と重そうな机を示されたら、二人で力を合せなければ運ぶことはできません。

どちらかがリーダーとなり、合図を出して気を合せなければ、持ち上げることもできません。

これがチームワークの基本です。



もっと重かったら、二人で相談して、手押し車など簡単な道具をつかうことも考える筈です。

ところが、とても処理できそうにもない大きな機械を「今すぐ倉庫に片付けろ」と言われた二人は、「今すぐと言われても、とても無理です」とことわってくるに違いありません。

目的の達成が不可能だと思ったら、人はあきらめてしまい動こうとしないものです。

目標は高い方がチームワークを発揮しやすいのですが、高すぎて目標の達成がとても不可能だとメンバーが感じたときから、逆にチームワークはがたがたになってしまうものです。

こんな場合は、チーム内の論議が、どうやって解決していくかの議論でなく、できない理由探し、責任逃れの悪者探しになってしまいます。

こうなったら、もうチームワークはどこかへ行ってしまい、仕事の成果は何も期待できなくなってしまうのです。



どんな状態がチームワークのいい状態なのでしょうか?


●ひとりひとりが、自分の役割を完全に果たしている状態

●自分の役割をこなせない人のために他の人がサポートしなくてもすむ状態


以上が、チームワークの良い状態です。



チームワークはサッカーや野球のチームと同じく目的を達成するのが前提です。

スポーツ でも企業活動でも、共通の目標である勝利を勝ち得るためには、各人のスタイルやものの考え方、立場や生活の背景がどうであれ、互いに尊重し合い、きっちり自分の仕事をすることが、正しいチームワークの姿です。


自立した個性のぶつかり合いがあるからこそチームワークですし、チームワークのダイナミックさです。


あなたの会社やお店では 、人と違うことや目立つことを恐れ、右へならえ的に同一行動をとり、仲良しサークルのように振る舞うことが、チームワークとされていませんか?

ところが仲良しサークルのように振る舞っているのも、実はそうしたいからではなく、互いの不勉強をフタをして隠すため、無意識に出来た陰湿な秘密結社の場合が多いのです。

ですからある種の人々にとっては、心地よいものにもなります。

それならそれでいいからそれでいいじゃないという考えもありますが、長い目で見ると百害あって一利なしです。働く人が不幸になるような仕組みには断固ノーを言いましょう。


チームワークは、みんなでやっていこうではなく、みんなが自分の役割を果たせることです。

そこには自ずから行動を起こす文化、卓越することを求める文化を賞賛する良識と良心が働いています。

つまり自由の概念と同じです。

自由とは勝手気ままなことをするのではなく、良識と良心を自ら働かせることなのです。

大リーグなんか観ていると選手も観客もそうだということがよくわかります。


チームワークは自己研鑽を基本にした、意見を意見として交わせる集団でなければなりません。

チームワークは、チームワークを意識して作っていこうという「モラル」「マナー」、つまり自ら自分の役割を果たせるように自己研鑽していく姿勢が大切なのです。


良いチームワークが創造できる管理者なら、現在の2倍以上の利益を生み出します。





●●● 今週のまとめです。 ●●●

組織を活性化させるには次の6項目を考える必要があります。


●(1)そもそも「組織力」とは何によって左右されるかを考える

●(2)組織の目標達成方法を考える

●(3)メンバーの能力を引き出す

●(4)メンバーのモチベーションをあげる

●(5)チームワークを強化する

●(6)マネジメントを考える


今日まで、上記の(1)〜(5)を見てきました。

そして、それらを組み合わせたのが「マネジメント」です。

マネジメントは組織の基礎です。

マネジメントする人が、いかにマネジメントするかによって組織の目標が達成されるか否かが決まります。

組織は一定の規模と複雑さに達するや、マネジメントを必要とします。

複数の人間が協力して、意志を疎通させつつ多様な課題を同時に遂行する必要が出てきたとき、組織はマネジメントを必要とします。


マネジメントを欠くとき、組織は管理不能となり、計画は実行に移されなくなります。

最悪の場合、計画の各部分が、それぞれ勝手なときに、勝手な速度で、勝手な目的と目標のもとに遂行されるようになってしまいます。

そして、ボスに気に入れられることのほうが、成果をあげることよりも重要になります。


たとえ、アイデアや製品、サービスが優れ、メンバーが有能かつ献身的であっても、また、リーダーがいかに偉大な力と魅力と権力を持っていても、組織は、マネジメントという骨格を持つように変身しない限り、失敗を重ね、停滞し、坂を転げ落ちていきます。



誰がマネジャーか?

マネジャーを見分ける基準は命令する権限ではありません。

「貢献する責任」です。

権限ではなく、責任がマネジャーを見分ける基準です。



マネジャーには2つの役割があります。

(1)部分の和よりも大きな全体を生み出す生産する組織を創造すること

(2)あらゆる決定と行動において、ただちに必要とされているものと遠い将来に必要とされるものを調和させていくこと



あらゆるマネジャーには5つの仕事があります。

(1)目標を設定する

(2)組織する

(3)動機づけとコミュニケーションを図る

(4)評価する

(5)人材を開発する



そして、最後に。

マネジャーに、そして全ての組織人に必要な根本的な資質は「真摯さ」です。




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2012年10月11日

メンバーの能力を最大化する方法

今週は「組織の活性化方法」です。


●(3)メンバーの能力を引き出す

●(4)メンバーのモチベーションをあげる


まず●(3)メンバーの能力を引き出す



メンバーのやる気を引き出す方法

★メンバーはどんな時に「やる気」を感じるか?

・チャレンジグな目標を達成したとき

・おもしろい仕事をしているとき

・高い評価を得たとき

これらは「効力感」(無力感の対義語)というキーワードでくくれる。



★どんな時に「やる気を失う」だろうか?

・否定的な言動が多い

・コミュニケーションが少ない

・言うことがコロコロ変わる


マネジメントとは「メンバーを通して目標を実現するために、メンバーのやる気と能力を引き出しながら、計画、実行、フィードバックを繰り返す一種の活動」と言える。

モチベーション・マネジメントは「マネジメント動機」「メンバーへの関心」「コミュニケーションの技術」の三要素から構成されている。



●「モチベーション・マネジメント」を行う方法の紹介


1)「希望の法則」・・・3つの「うまくやれそうだ」と思わせる方法・・・これが無いと「無気力」になる。

原理(1)頑張れば上手くいく

・技術1「明確なフィードバック」を繰り返す

*フィードバックを与えるタイミングを間違わない・・・「その時、その場」で、一言でもいいから。

*フィードバックのレベルに明確な段階をつける・・・頑張ったら、それなりに。

*言葉で明示的に行う


・技術2「フィードバックのTPO」を考える

*声のトーン

*態度

*場所


原理(2)十分にやれそうだ

・技術3「達成可能な到達目標を設定する」

*目標の水準・・・不可能な目標はかえってやる気を削ぐ、あきらめを誘う

*目標の達成状況をはかるメジャー(評価基準)も注意する

*目標未達者にこそ、フィードバックを早め、早めに必要

*不満は不満で全てを吐き出させる。すると不満ばかり言っている自分がいやになる。そして、その反動で建設的な行動にでる。これをカール・ロジャースが「指示しないカウンセリング」として「人は受容してもらうと、本当にしたいことに行き当たる


・技術4「下位目標の設定を工夫する」

*大きな目標に対しては適切なマイルストーンが必要

*本人にマイルストーンを決めさせる

*必要に応じてアドバイスを与える

*適宜、マイルストーン達成度を調べる

*優先度が同じなら、成功する確率が高いものからやらせる


・技術5「気が楽に持てるように原因を解釈する」

*プロジェクトが失敗しても「自分に能力が無いせいだ」とは決して思わないこと

*「努力不足」も、きつい

*手ごろな理由としては「戦略がまずかった」。

*とりあえず、「運が無かった」と思う ⇒ ダメージが消えたら、本格的に失敗した原因調査にとりかかる。

*真面目で几帳面で繊細なメンバーは、こちらが思っている以上に心理的ダメージを受けている

*ここにこそ、あなたの出番がある。⇒ストレスや不安のコントロールを手助けし、働きかけてあげる。

*能力不足という思い込み⇒自信喪失⇒意欲低下・・・このサイクルを断ち切ってあげる

*失敗は「方策」が間違っていたということに気づかせる。(他の人も同様にしている、と言ってあげる。)



原理(3)何をどうすればいいかわかる

*「頑張ろう」という意識が有っても「どう頑張ればいいか」を知らない人が多い。

*「どう頑張ったらいいか」を教えてあげる。

*「やる気」を空回りさせない

*自分の採っている仕事の進め方や戦略についてしっかりとした自覚を持っているか確認する

*正しい選択をしているかをチェックしてあげる

*メンバーが困っていないかを確認する

*「何をどうすればいいか分かっている」という手段保有感を高め、効果的な仕事の進め方や戦略について自信を持てるようにする。



・技術6「手本」を目に見えるかたちで示す

*まずは自分がやってみせる

*「言葉」だけでなく「見せる」教育を意識的にやる

*ただ漠然と眺めさせているだけではだめ。まず「こうすると良い」という行動のパターンを明確に示してみせる

*また「こうすると、こんな効果がある」といった行動の結果までを必ずセットで見せる。

*例えば同行させた時に治験責任医師と交渉を行ったという「行動のパターン」と、その結果として相手のこういう反応をひきだしていたという「行動の結果」について、同行から帰ってきた時にまとめさせると良い。

*プレゼンテーションについては、話すのが上手な人はどのような工夫をしているかという「行動のパターン」と、その結果、聞き手にどんな印象を持たせたかという「行動の結果」の二つについて、ミーティング形式で話あわせるのも教育研修方法として有効



・技術7「自分が使っている方略を自覚させる」

*「自分はどこでつまずいているか」「いったいどこに問題があるのか」という質問に対して、すぐに答えられるか?

*「自分はどこがわかっていないのか自分でもわからない」

*せっかくノウハウを伝授しても、自分でうまくいったかどうかを把握できないと効を奏さない。

*うまく行っている人も「どうしてうまく行っているか」が分からないと、さらに良くしたり、次回に生かせない。

*自分の仕事を認識しながらやらせる「今のプロジェクトはその方法でうまくいくのか?」や「つまずいているとしたら、どこに問題があるかを自覚できているか?」という質問が有効


以上の方法を使って、メンバーに「うまくやれそうだ」と思ってもらいましょう。





次に●(4)「メンバーのモチベーションをあげる」です。


●●● リーダーシップの条件 ●●●

原則1.自分を「カンパニー」ととらえる

優れたリーダーは強い自立心を持っている。

自分をカンパニーととらえ、日々、経営努力を積み重ねエクセレント・カンパニーを作ろうとしている。

あなたが優秀なリーダーになりたいなら自分自身をひとつの株式会社に置き換えて考えてみてはどうだろうか?



●●● モチベーションをマネジメントする ●●●

リーダーがチームのモチベーションをアップするうえで、まず取り入れなければならない考え方、それは「モチベーション・マーケティング」という発想である。

言うまでも無く、マーケティングとは、企業や市場や顧客といった外界を把握するために行う活動である。

「誰をターゲットに」「どんな商品やサービスを」「どこで、いくらで、どのような方法で」提供すれば受け入れられるのかを分析することで、企業は課題を明確化して適切な戦略を打ち立てる。

ここでは、このマーケティング活動を、企業の内に対しても行うべき時代が到来したことを強調したい。

かつては、社員のモチベーション状態を把握する必要性そのものがなかった。

年功序列や終身雇用という仕組みによって、企業と個人がお互いに「縛り合う関係」を育んできたため、「組織への忠誠心」を社員から引き出すことは容易なことだった。


しかし、今は、企業と個人がお互いに「選び合う関係」=人材流動化の時代である。

一度採用した社員であっても、企業がその組織に属するに値する魅力を提供し続けることができなければ、モチベーションを低下させ、やがては組織外への流出を招くこととなってしまう。


リーダーに求められているのは、モチベーション・マーケティングによって、メンバーが組織に「何を求めているのか」「何に満足しており何に不満を抱いているのか」というモチベーションの方向や強弱の状態をしっかりと把握することが必要だ。



●魅力的な目標や報酬を掲げる

V.ブルームの『期待理論』によれば、人間のモチベーションは「目標の魅力」X「達成可能性」で決まるとされている。

企業組織では「報酬の魅力」X「獲得可能性」と置き換えてもいいだろう。

自分にとって魅力のないものに対して、人はエネルギーを使おうとしない。

また、「達成可能性(獲得可能性)」は、「成し遂げられそう」「手に入れられそう」という実感のことであり、この実感が行動の喚起には大切になる。


逆に「絶対に無理だ」と思ってしまう目標などは掲げる意味がない。誰も意欲がわかないだろう。

しかし、達成が簡単な目標でも、それが社会のなんのためにもならない目標であれば、これまた意欲がわかないだろう。

だからリーダーは「目標の魅力」X「達成可能性」を上手に活用すべきだ。

リーダーが、モチベーション・クリエイターになるには、メンバーに対して、目標の魅力を高めるように働きかけを行う必要がある。

メンバーが「やりたい」と思えるような目標を設定してやること、あるいはメンバーがどうしても手に入れたいと思えるような報酬を設定してやることだ。

「やれる」「やれそう」と思えるように、能力を引き出してやる。

そのような支援行動を惜しまないことだ。



●「目標の魅力」を高める処方箋

▼ラダー効果(ハシゴの利用)

上位の目標を示すことで、部下自身の業務を「意味づける」ことは特に重要だ。

人は「意味がない」ことに対して意欲を持ち得ない。

部下が仕事の意味を見失ってモチベーション低下に陥っている場合には、仕事を上位概念でとらえ直させてやることが有効である。



リーダー自身も、部下に目的や背景をしっかり伝えて仕事をさせているか、確認する必要がある。

仕事の意味を伝えるためには、「抽象化」という技術が欠かせない。

ここでは「抽象のハシゴ」という考え方を利用する。

たとえば「リンゴ」を、すこしずつ上位の概念でとらえてみよう。

概念をワンステップ上がると、「リンゴ」は「果物」としてとらえることができる。

もうひとつ上がると「食べ物」という概念に、さらにもうステップ上がると、「人間が生きるために不可欠なもの」という抽象化が可能となる。



これと同じことを仕事に対して行うのである。

「SDV」という仕事は「モニタリング」という概念にもち上げられる、さらに「モニタリング」の上として「治験」があり、さらにその上には「新薬開発」があり、さらに「疾病の苦痛を取り除く薬の開発」というのがある。

「SDV」がとても大変な仕事で、「私は何のためにやっているのだろう?」と疑問に思ったら、「患者の苦痛を取り除く新薬を開発するためだ」と思うと、モチベーションがアップスすることが多い。


リーダーがメンバーの仕事のとらえ方を変えるアプローチを行うことで、仕事への取り組み方や成果は格段に変わるだろう。



●達成可能性を高める工夫が必要

▼マイルストーン効果・・・途中目標を明確に設定する

目標を達成したときの喜びは、次の目標に向けて高いモチベーションを発揮するための原動力となる。

そこで、リーダーには、達成に至るまでの「道のり」をメンバーに示すことが求められる。

目標達成までのプロセスを明確化し、途中途中に「マイルストーン」を置いて小目標を設定させるのである。

何をいつまでに達成すればよいのか、という小目標の達成を積み重ねることが、最終的な目標や成果に近づくことになるからだ。

小目標を設定するうえでは「数値化」「点数化」が有効な手法である。

例えば「3ヶ月でCRF20例分、回収」という目標が与えられたとする。もし3ヶ月先のゴールしか決まっていなければ、メンバーには「まだ3ヶ月先だ」という油断が生じ、スタートダッシュはおのずと遅くなる。

しかし、3ヶ月先のゴールから遡って、「今、何を行動すべきか」「いつまでにどこまで実現するか」を考えれば、目標設定のその日から目標に向かって走りだすことができる。

小目標を周囲に宣言させ、状況をともにモニタリングすることも、達成へのモチベーションを引き出す秘訣である。




▼フィードバック効果・・・取組み結果を評価する

たとえば、プレゼンテーションがうまくなりたければ、自分の姿をビデオに撮って見るのが一番良い方法である。

その他のビジネスでも同様の効果を発揮すべく、リーダーは、適切なフィードバックでメンバーの客観的な評価を伝える必要がある。

「できているつもりの自分」と「実際の自分」のギャップが分かるとモチベーションアップに繋がる。

リーダーは、賞賛するにしても、修正に向けた指導を行うにしても、「正確に、客観的な自分の評価」を信頼してもらう必要がある。

そのためには、リーダー自身が尊敬される仕事の進め方をする。

また、「即時性」も重要な要素だ。

「半年前の会議で、こう言っていたが、あれはよくなかった」と言われても、その指摘を素直に受け止められるメンバーはいない。

「なぜ、そのとき指導してくれなかったのだろう」と思うだけだ。

正確に即時にフィードバックしてくれるリーダーが、メンバーの成長した意欲をかきたて、実際に大きく成長させていく。





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