2012年06月02日

「がん」とは?「癌」とは?「悪性腫瘍」とは?「抗がん剤」とは?

今週は「がん」について学びます。

今後も、ときどき、こんなふうにある疾患について学んでいきます。


何故か?

スーパーモニターやスーパーCRCになるには、浅くてもいいので、幅広い疾患の知識が必要だからです。

何故か?

何故ならば、どんな疾患を対象としたプロトコルであったとしても、有害事象としては、なんでもありえるからです。

たとえば、「更年期障害」を対象とした治験を担当したとしても、患者さんがいつ「子宮がん」になるかわかりませんし、「糖尿病」になってしまうかもしれません。

たとえば、「高血圧」を対象としたプロトコルだとしても、患者さんが突然、「緑内障」になってしまう可能性もありますし、「肺炎」なってしまう可能性だってあります。

だから、有害事象の対応がいつでもできるように、幅広い知識を持っておいたほうがモニターもCRCもやりやすいわけです。

それに、いつでも、どんな疾患の治験でも担当できるぞ!とスタンバイしておくのが賢いモニターでありCRCです。


とまぁ、そんなこんなで、今週は「がん及び抗がん剤」についての勉強会です。

1週間を使って「がん及び抗がん剤」を学んでいきましょう。



●●●悪性腫瘍とは?●●●

悪性腫瘍(あくせいしゅよう、英: malignant tumor)は、遺伝子変異によって自律的で制御されない増殖を行うようになった細胞集団(腫瘍、良性腫瘍と悪性腫瘍)のなかで周囲の組織に浸潤し、また転移を起こす腫瘍である。

悪性腫瘍のほとんどは無治療のままだと全身に転移して患者を死に至らしめる。

一般に癌(ガン、がん、英: cancer、独: Krebs)、悪性新生物(あくせいしんせいぶつ、英: malignant neoplasm)とも呼ばれる。

「がん」という語は「悪性腫瘍」と同義として用いられることが多く、本稿もそれに倣い「悪性腫瘍」と「がん」とを明確に区別する必要が無い箇所は、同一語として用いている。



【語義】

悪性腫瘍(malignant tumor)」は、一般に「がん(英: cancer、独: Krebs)」として知られているが、病理学的には漢字で「癌」というと悪性腫瘍のなかでも特に「癌腫(上皮腫、carcinoma)」のことを指す。

日本語では平仮名の「がん」と漢字の「癌」は同意ではない(!!)。


平仮名の「がん」は、「癌」や「肉腫」、白血病などの血液悪性腫瘍も含めた広義的な意味で悪性腫瘍を表す言葉としてつかわれているからである。

したがって癌ばかりでなく肉腫や血液悪性腫瘍も対象にする「国立がん研究センター」や各県の「がんセンター」は平仮名で表記する。



「癌」を表す「cancer」は、かに座 (cancer) と同じ単語であり、乳癌の腫瘍が蟹の脚のような広がりを見せたところから、医学の父と呼ばれるヒポクラテスが「蟹」の意味として古代ギリシャ語で「καρκ?νο? (carcinos)」と名づけ、これをアウルス・コルネリウス・ケルススが「cancer」とラテン語訳したものである。

漢字の「癌」は病垂と「岩」の異体字である「嵒」との会意形声文字で、本来は「乳がん」の意味である。

触診すると岩のようにこりこりしているからで、江戸期には「岩」と書かれた文書もある。

有吉佐和子の小説「華岡青洲の妻」には、乳がんを表す「岩(がん)」ということばが頻出する。



「悪性腫瘍」は「悪性新生物」とも呼ばれることがあるが、malignant neoplasmの訳語として作られた言葉で、malignant「悪性の」、neo「新しく」、plasm「形成されたもの」を意味する。



【概念】


「悪性腫瘍」とは、腫瘍の中でも、特に浸潤性を有し、増殖・転移するなど悪性を示すもののことである。

ヒトの身体は数十兆個の細胞からなっている。

これらの細胞は、正常な状態では細胞数をほぼ一定に保つため、分裂・増殖しすぎないような制御機構が働いている。

それに対して腫瘍は、生体の細胞の遺伝子に異常がおきて、正常なコントロールを受け付けなくなり自律的に増殖するようになったものである。

この腫瘍が正常組織との間に明確なしきりを作らず浸潤的に増殖していく場合、あるいは転移を起こす場合(多くは浸潤と転移の双方をおこす)悪性腫瘍と呼ばれている。


なぜ、「がん」は怖い病気なのか?
    ↓

●無制限に栄養を使って増殖するため、生体は急速に消耗する

●臓器の正常組織を置き換え、もしくは圧迫して機能不全に陥れる

●異常な内分泌により正常な生体機能を妨げる(→播種性血管内凝固症候群 (DIC)、傍腫瘍症候群、高カルシウム血症)

●全身に転移することにより、多数の臓器を機能不全に陥れる


「がん」は「転移」して生態を消耗させて、多数の臓器を機能不全に陥れる、これが「がん」が怖いという2大理由なわけです。





●●●【がん理解の歴史の概略】●●●

がんという病気を理解しようとする人たちは古代からおり、悪戦苦闘が繰り広げられてきた。

(上述のごとく)cancerという言葉の歴史は古いもので、古代ギリシア語のkarkinos カルキノス(=カニ)に由来している。

あちこちに爪を伸ばし食い込んでゆく様子を、その言葉で表現したのである。


がん研究、腫瘍学を指す「オンコロジー」という言葉も、古代ギリシア語のoncos オンコス(=塊 かたまり)を語源としている。

古代ローマのガレノス(2〜3世紀ごろ)は、がんは四体液のひとつの黒胆汁が過剰になると生じる、と考えた。(ガレノスというのは1500年ころまでは、医学の領域で「権威」とされた人物である)。

ガレノスの後継者のなかには、情欲にふけることや、禁欲や、憂鬱が原因だとする者もいた。(いろんな学説があるものです。)



また同後継者には、ある種のがんが特定の家系に集中することに着目して、がんというのは遺伝的な病苦だ、と説明する者もいた。


18世紀後半をすぎるころになると、がんの一因として環境中の毒(タバコ、煙突掃除夫の皮膚につく煙突の煤、鉱坑の粉じん、アニリン染料が含有する化学物質 等)もあるのでは、とする説が、多くの人によって提唱された。

19世紀なかごろに、フィラデルフィアの名外科医のサミュエル・グロスは「(がんについて)確実にわかっていることは、我々はがんについて何も知らない、ということだけである」と書いた。

そして、そのような「何も知らない」という状況は、19世紀末の時点でも、ほとんど変わっていなかった。



その後1世紀ほどを経た現在、がんについてある程度のことは分かったと言える状態になった。

だが、その理解は一気になされたわけではなく、理解を進めるたびに研究者の間で新たな疑問が登場し、科学的な知識が徐々に増えてきた、という状態なのである。

がん研究は研究者たちにとって、多くの困難と挫折に満ちたものであった。


20世紀初頭には、「感染症は特定の微生物によって引き起こされる」という説を支持する例が実験によって多数確認されため、他の病気も容易に解明されるだろうと考えたり、がんも解明されるだろうと予想する人は多かった。

だが、そのような予想は安易すぎたのである。




【悪性腫瘍に関連する医学的分類】

悪性腫瘍(malignant tumor)の用語は病理学において以下のように分類される。

●癌腫(羅: carcinoma):上皮組織由来の悪性腫瘍

●肉腫(羅: sarcoma):非上皮組織由来の悪性腫瘍

●その他:白血病など


また、下記のようが特徴がある。

●癌腫・・・(由来)上皮性、(発育速度)速い、(年齢)高齢者、(転移行性)リンパ行性、(構造)胞巣構造

●肉腫・・・(由来)非上皮性、(発育速度)より速い、(年齢)若年者、(転移行性)血行性、(構造)混合



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医薬品ができるまで(治験に関する話題)
posted by ホーライ at 11:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 病気の勉強 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月01日

臨床研究・治験活性化5か年計画2012に対する意見(10)

今週は先週に引き続き「『臨床研究・治験活性化5か年計画2012(案)』に関する意見の募集について寄せられた御意見について」ということで、治験の活性化5ヶ年計画に対するパブリックコメントうについて見ていきます。
   ↓
臨床研究・治験活性化5か年計画2012(案)」に関する意見の募集について寄せられた御意見について


そもそもこれは、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012案に関する意見の募集について」によせられたパブリックコメントです。。



■■■■■■■■■■

「開発が進みにくい分野への取組の強化等」に関するコメント   ★★★=コメントです。


★★★国立保健医療科学院の臨床研究情報や独立行政法人医薬基盤研究所のサイト検索、一般社団法人日本医薬情報センター、公益財団法人難病情報センター、いずれにも出てこない疾患がないよう、窓口の網羅ができると心強い。
 
  ↓(回答)

貴重な御意見をありがとうございます。

計画には、「希少・難治性疾病等の治験に関する情報提供」について記載しており、今後、計画に基づき取り組んでいきます。



★★★研究資金を様々なところから集めるのに研究者は苦労しています。

各研究資金の使用できる範囲および期間の拡大および複数の資金での雇用など、柔軟な運用体制を整備することは極めて重要とおもいますので、こうした検討を短期的に行うことを明言化していただきたいと思います。

  ↓(回答)

貴重な御意見をありがとうございます。

計画には、「厚生労働省・文部科学省が実施している整備事業や研究費については、それぞれの役割・機能を明確化した上で、効率的に資金配分を行う。」と記載しており、今後、計画に基づき、取り組んでいきます。




★★★臨床研究中核病院や早期・探索的臨床試験拠点医等以外での取組みとしては、継続的に予算を確保される等の仕組みによる若手研究者が定着できる環境整備が必要です。

「厚生労働科学研究費等において、医師主導治験への更なる支援を行う」ことも重要です。


  ↓(回答)

計画には、「厚生労働科学研究費等において、医師主導治験への更なる支援を行う」と記載しており、今後、計画に基づき、取り組んでいきます。





『小児疾患、希少・難治性疾患等への取組』に関するコメント   ★★★=コメントです


★★★「患者数が少ない等の理由により製薬企業が開発に着手しない医薬品・医療機器を対象とした臨床研究・治験に対して、財政上の支援の充実を図る。」については、できる限りの支援をすべきである。
 
  ↓(回答)

計画には、「患者数が少ない等の理由により製薬企業が開発に着手しない医薬品・医療機器を対象とした臨床研究・治験に対して、財政上の支援の充実を図る。」と記載しており、今後、計画に基づき、取り組んでいきます。




★★★「臨床研究に関する倫理指針」及び「疫学研究に関する倫理指針」の境界部分を明確化とあります。

境界部分を明確化することは、各施設で努力していると思いますが、現実的は、あいまいな研究は多数あり困難と思います。

倫理指針が多数あってそれによって見解がちがうものもあり、かえって混乱を生じています。

乱立している指針を1つの指針で統一することで、被験者保護を明確にすれば、臨床研究・疫学研究の分類に拘泥することなく活用しやすくなると思います。


  ↓(回答)

計画には、「「臨床研究に関する倫理指針」及び「疫学研究に関する倫理指針」における指針間の関係を見直し、臨床研究を実施する際により活用しやすい指針となるよう検討する。」と記載しており、今後、計画に基づき、取り組んでいきます。




★★★「希少・難治性疾患などの治験情報に関しては、国立保健医療科学院の臨床試験情報ポータルサイトにおいて、様々なウェブサイトの提供情報を集約し、「希少がん」「希少疾患」「難治性疾患」というキーワードを用いても検索できる体制を構築することが望ましい。」

  ↓(回答)

今後、アクションプランを策定する際の参考にさせて頂きます。






『その他のご意見』   ★★★=意見です


★★★これまで、治験活性化5カ年計画を行なってきているが、わずかな進歩が見られるのみであり、飛躍的な活性化は得られていないのが現状である。

我が国での臨床研究・治験活性化を目指すためには、現状の把握・問題点を浮き彫りにしてそれに対する具体的解決策・対策を立てること、またそれを誰がどうやって実践し、評価、見直しをしていくか?という実践的な計画を立てる必要がある。

本計画で最も欠如していることは、誰がこのような計画を実践し、誰が評価、見直しをやっていくか?という具体的な案が欠如していることである。

厚労省が中心になってやっていくのか、研究開発振興課が中心となっていくのか?他の課とどのような連携をとっていくのか?国立がん研究センターや国立循環器病センターの役割はどうなるのか?など、計画をどうやって実践、またそれをしっかりとモニター・評価をするしくみについても検討すべきである。

  ↓(回答)

今後、アクションプランの策定にあたっては、可能な限り実施者の特定を行う予定です。



★★★現状での問題点と改善案について

問題点

1. ここ5〜10年間で、治験総数、治験症例数ともに、韓国、中国に追い抜かれている。

国際共同治験も日本が仲間はずれにされることが多い。

(ア) 治験のコスト高の問題が原因。治験コストは韓国の2倍、中国の5倍である。

(イ) 日本では英語プロトコールで治験ができない

(ウ) 人材育成(医師、CRCなど)がすすんでいない


2. 日本発の創薬が極めて減少していている

(ア) 産官学連携ができていない

(イ) 企業の開発力の低下

(ウ) 民(患者)の参加意識が少ない


日本の臨床研究・治験の現状は、危機的状況にある。

欧米諸国からは、既に10年以上の遅れをとっていると言っても過言ではない。

最近のグローバル臨床試験(治験以外の国際共同試験にも参加していない)からは、置いていかれ、治験レベルでは、韓国、中国にも抜かれ、分子標的薬剤の時代になってから、日本からの創薬が全く途絶えた状況になり、また、世界100カ国以上で承認された薬剤が日本で使えないなど、我が国の臨床研究・治験を含めた薬事行政全てが先進国はおろか、発展途上国以下のレベルにまで成り下がってしまっている。

この現状をしっかりと、我々は見据えて、何が原因であり、どのような改革を行うべきか、危機的意識をもって取り組む必要がある。

改善案(計画案に記載のない改善案)

1.無駄な治験の排除 国際共同治験からはずされた結果、欧州・アジア諸国にて承認された後、改めて日本で治験を開始するという事例が多い。

この場合は、最低限の治験にするべきであるが、「日本人のデータ」に固執するあまり、時に何千例規模の無駄な(海外では全く評価されない。Major journalにも相手にされない)治験をしている現状にある。

このような治験は、企業側にとっても無駄な治験費用の排出、国側にも無駄な審査時間・費用の排出、医療機関側には、無駄な労働時間の排出、患者側にとっても、ドラッグラグにしかならない。

これまで日本で行われた無駄な治験(日本で治験をやったが、海外での治験結果と何ら変わらなかった事例、Major journalにアクセプトされなかった事例)を徹底的に洗い出し、無駄な治験をやらないようにするべき。

海外で既承認薬を日本で新たに治験を開始する場合には、第二相試験以降の治験が本当に必要であるのか?

PMDAと企業との2者間のみで議論するべきではなく、研究者・患者側を交えた公開の場で議論をするべき。

無駄な治験を排除することは、企業にとっても、研究費を新たな治療開発費に投入できることにもなるし、医療者(研究者)のモチベーションが向上し、患者はドラッグラグに苦しむこともなくなる。


2.評価体制のシステム作り

臨床研究(試験)・治験に対する評価システムに関しては、我が国では具体的なシステムが欠如している。

以下のシステム(組織づくり)が必要臨床研究:

現行では、年1度の厚労省、文科省科研費の発表会、研究結果報告書による調査という低レベルな評価制度でしかない。

研究者による互いに評価するPeer Reviewシステム方式の構築。

例えばがん領域研究に対しては、他領域の研究者(循環器など)が具体的評価を行うなど。

毎年何回か開催し、報告書も作成する。

治験:外部評価(FDA・NCIから招聘、EMEAから招聘、海外の研究者、患者代表、医療業界以外の企業人などをメンバーに含める)による具体的な評価制度の策定。







★★★これまでの活性化の取組をベースに、単に延長で終わることなく、さらなる飛躍となるような計画とその実行にしてもらいたい。

そのためにも今回の臨床研究・治験活性化5か年計画2012が実施された5年後の姿を明確にすべきである。

5年後に医療機関がどのようになっているか、具体的な数値目標(臨床研究をどれだけ実施しているか、臨床研究の論文がいくつ掲載されているかなど)を設ける必要があると思われる。

また、今回の計画の進捗の管理、評価を毎年行うなど、成果を評価する仕組みとそれを行う外部機関等を設置し、評価は公表されるべきだと考える。

  ↓(回答)

今後、アクションプランを策定する際の参考にさせていただきます。



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さて、いかがでしたか?

先週と今週の2週に渡って「『臨床研究・治験活性化5か年計画2012(案)』に関する意見の募集について寄せられた御意見」について見てきました。

様々な意見があり、それはそれで貴重だと思いますが、もっと大事なことはそれらを実践にどのように活かしていくか、です。

それと、今回の「意見」は「当局」に向けられたものだと考えがちですが、実は、私たち(民間企業・製薬業界)に向けられたコメントとも受け止める必要があると思います。

これらのことを「他人ごと」として見るのではなく、「当事者」として見て、考えることが重要です(当事者意識が不可欠)。

私たちの努力不足で発生している問題も多いと思います。(例えば、「サンプリングSDVの実施」等)



当局や活性化計画、ガイドラインを批判するだけではなく、「じゃ、私たちにできることは何?」という考え方が大切です。

今後も他人任せではなく、自分に向けられた課題として取り組んでいきましょう。

そして、最後に、「患者の視点」を忘れずに。


今後の治験の活性化は僕やあなたの肩にかかっています。

せっかく、この世に生を受けたのですから、生きていた証が欲しいじゃありませんか。

そのためにも。ね?






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医薬品ができるまで(治験に関する話題)
posted by ホーライ at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 治験の活性化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする