2012年06月16日

サンプリングSDV

今週の話題に入る前に・・・・・・

治験の国際化が進み、世界同時開発も軌道に乗りつつあります。

そんな治験業務をやっていると欲しくなるのが、そう!「GCP省令」の英語版です。

知っていました?GCP省令の英語版があったってこと。

こちらです。「GCP省令の英語版」GCP省令の英訳、GCP省令の英語です。(正しい2009年の改定版ですので、最新ではありません。)
      ↓
「GCP省令の英語版」

海外の医師やCRCに日本のGCP省令を英語で説明するときに、とても重宝しますね。

あと、このGCP省令の英語版を使って、社内で「GCP英語勉強会」まで開けます!!




さて、ということで今週は「サンプリングSDV」の考え方を見ていきましょう。

SDVの効率化検討
  ↓
「SDVの効率化検討」


2007-8年度の重点事業として“治験の効率化の推進”を掲げ、SDVに関する問題を検討し、“現行のSDVに対する改善提言”及び“サンプリングSDVに関する提言”の2本の柱とした“SDV効率化の検討”としてまとめました。また、モニター(CRA)がSDVの際にどのような視点で実施しているのかを実施医療機関へ伝えるコミュニケーションツールとして、“直接閲覧時のモニターの視点”を作成いたしました。

両資料が本邦における治験の効率化の推進の一助となりましたら幸いです。


「SDVの効率化検討」

はじめに

1997年の新GCP施行後、実施医療機関、行政及び企業の努力、経験の積み重ねとあいまって、日本における治験のスピードと品質は、以前よりも高いレベルに達してきたものと考える。

しかし、日本と欧米では、モニター1人あたりの担当被験者数及び実施医療機関数がかなり異なっているという報告もある。

世界多地域同時開発が推奨される中、モニター1人あたりのパフォーマンスの改善は大きな課題と考えられる。

日本製薬工業協会医薬品評価委員会臨床評価部会(以下、臨床評価部会)では、治験プロセスの見直しとそれに基づく改善を行い、CRC、モニターを始めとする治験当事者の負担を軽減させる必要があると考えている。



SDV(Source Data Verification)は、治験データの品質を確保する上で重要な位置付けにあり、その適切な実施には多大のリソースを要しているのが現実であり、モニタリングにおける各種作業の中でも最大であるといえる。

このことは、治験依頼者はもちろんのこと、実施医療機関においても大きな負担となっており、SDV時間短縮に向けた実施医療機関からの提言も報告されている。


そこで、臨床評価部会では、2007-2008年度の重点事業計画の1つとして、「治験の効率化の推進」を掲げ、オーバーワークが懸念されている現在のSDVを含む治験依頼者及び実施医療機関の治験プロセスの見直しを行い、治験効率化のための提言を行うこととした。

その中で、TF-5は「SDVの効率化検討タスクフォース」として、治験データの信頼性確保方策のあり方を検討し、サンプリングSDVを含めた効率的なSDV方法を提言することを目的として、立ち上げられた。


2006年7月から8月に臨床評価部会加盟会社77社及び日本CRO協会加盟会社20社を対象に実施された、SDVに関するアンケート調査の結果(以下、2006年アンケート結果)、『既往歴/合併症/手術歴』、『併用薬/併用療法』及び『有害事象』のSDV作業に多くの時間を要しており、その原因として、治験計画段階での必要なデータの絞込みが不十分なことや、モニターのSDVの確認要点の理解不足などが挙げられた。

また、タスクフォース内での調査結果においては、同様の問題点に加え、実施医療機関からの『モニターはSDVで何をそんなに長い時間をかけて確認しているのか?』という疑問に表されるような、治験依頼者と実施医療機関との相互理解不足も挙げられた。

本タスクフォースはSDVの効率化の検討として、これら現行のSDVの問題点及びその解決策について検討し、更に効率化に向け欧米で広く用いられている『サンプリングSDV』の考え方の紹介やその導入における課題についての検討も行った。




2. 現行のSDVに関する改善提言

2.1. SDVの現状

2.1.1. 背景

2006年アンケート結果3)においては、全回答(n=339)の43%で1症例あたりのSDVに1〜3時間を要しているとの回答であり、3時間以上要するとの回答も38%に及んでいる(図1)。

同報告書においては、事前準備や事後報告も含めると40症例のSDVを行う場合FTE(Full-time equivalent)換算で200人・時間にも及ぶと結論している。

なお、同報告書中でSDVに時間を要する項目としては、既往歴/合併症/手術歴(69%)、併用薬/併用療法(67%)及び有害事象(64%)が他を圧倒していることが明らかにされている(図2)。

これらの背景には、現在実施しているSDVがオーバーワークに陥っている可能性があり、それに起因する非効率も考えられることから、まず、本タスクフォースにおいて、2006年アンケート結果3)を踏まえて、あらためて現行のSDVにおける問題点の詳細を明らかにすることとした。



2.1.2. タスクフォース内調査

本タスクフォース参加会社19社から、SDVにおける問題事例を収集することとした。事例の収集にあたっては、以下の内容を調査した。

1) 試験の相、疾患領域、症例報告書のタイプ(冊子型、分冊型、EDC)

2) 問題の具体的な内容

3) 改善案

この調査により、300件を超える事例が収集された。

収集された事例について、手続きに関するもの等SDVに関連しないものを除外し、類似の事例の集約等を行った。収集された主な事例を表1に示す。



■■■ 表1 タスクフォース内で収集されたSDV時の問題に関する主な事例 ■■■


★計画書・症例報告書等の問題

・ 既往歴、合併症、併用薬等の調査期間が不明確なため、存在する全てのカルテを確認した

・ 既往歴、合併症、併用薬等の調査内容のうち、症例報告書で必ずしも収集する必要がないと考えられる情報の確認に時間を要している

・ 併用薬(点滴等)で変更された全ての用量を確認する必要があった

・ 症例報告書に記載されたコメント内容のSDVに時間がかかる

・ 原資料の定義が明確ではなく、患者日誌等を含めた多数の資料を確認している

・ SDVチェックリストの設計が悪いため、SDVに余計な時間がかかる

・ 長期試験にもかかわらず冊子型症例報告書を使用したため、1例のSDVに時間がかかった




★原資料整備に関わる問題

・ 既往歴に関して、保険病名等も含め、医師判断で取捨選択された内容の確認に時間を要している

・ 他院情報が不十分、または情報入手に実施医療機関から十分な協力が得られなかった

・ 原資料が完成されていない(鉛筆書き記載・付箋が残っている)

・ 直接閲覧後にカルテが修正・追記されていたため、内容確認に時間を要した

・ カルテの記載内容とカルテシール等に不整合があるため確認に時間を要する

・ 「Do」処方の確認に時間を要している

・ 有害事象の転帰確定日が不明確であった

・ 原資料の整理が悪く、必要な情報を探すのに時間がかかる

・ 医師の字が読みにくいため時間がかかる




★担当者のスキルの問題

・ モニターが治験実施計画書の内容を十分理解していない (CRCが治験実施計画書の内容を十分理解していない)

・ カルテの内容を読むのに慣れていないモニターによるSDVは時間がかかる

・ モニターがSDV時にカルテを丸写ししている

・ SDV前のCRCの準備(過去のカルテ・他科カルテ等)が不十分

・ CRCがカルテの内容を把握しておらず、内容確認ができなかった

・ 実施医療機関からの問い合わせに対してモニターのレスポンスが悪いため、SDV時点でも症例報告書が完成していない



★その他

・ SDVに必要な十分広い場所の確保ができていない

・ 実施医療機関からSDVに対する時間的制約があり、複数回にSDVを分割する必要があった

・ 電子カルテの閲覧制限により全ての情報を確認できなかった






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医薬品ができるまで(治験に関する話題)

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2012年06月15日

最近の治験環境 (共同IRB等(中央IRBを含む)の活用の件)

共同IRB等(中央IRBを含む)の活用に関する治験依頼者の考え
   ↓
「共同IRB等(中央IRBを含む)の活用に関する治験依頼者の考え」


1. 緒言

国内の治験環境については、「新たな治験活性化5カ年計画の中間見直しに関する検討会」(平成22年2月22日医政発0222第6号)1)により、「治験のスピードに関しては全体として欧米と比較して遜色ないレベルとなっており、治験実施計画書遵守という視点における「質」に関しても大きな問題は見られないが、症例集積性に関しては、諸外国と比較して必ずしも高いとは言えない」と評価されている。

このため、「治験等の効率化に関する報告書」(平成23年6月30日医政研発0630第1号)2)では、症例集積性を高める方策の一つとして、「アジア諸国のメガホスピタルと同等の症例集積が可能となる治験ネットワーク(以下、ネットワーク)体制を構築する必要がある」ことが示されている。


そのネットワークとして最低限有するべき機能として標準業務手順書(以下、SOP)の作成と各種様式等の統一、事務局の積極的なマネジメントと並んで共同治験審査委員会等(以下、共同IRB等)の設置及びその利用が求められている。

治験審査委員会(以下、IRB)については、EUではEU臨床試験指令(EU Clinical Trial Directive)により、1加盟国につき1つの倫理審査委員会での承認と当局の許可により臨床試験が開始でき、米国では連邦行政規則で共同審査(Joint or cooperative review)は条件に適合すれば認められるとして共同審査の実施のためのガイダンスなどが出されている。



我が国では、平成20年3月に「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年3月27日厚生省令第28号)」(以下、GCP)が改正され、医療機関毎のIRB設置原則が廃止され、複数の医療機関の長が共同で設置したIRB及び他の医療機関の長が設置したIRBへの審査依頼が可能になった。

また、ある特定の法人や学術団体によるIRB設置についても可能となったことにより、さらに共同IRB等の利用範囲が広がった。


このように、共同IRB等は、主に効率化の観点からその設立と各医療機関による積極的な活用が期待されていたが、現状としては必ずしも十分普及していない。


以上の背景から、日本製薬工業協会医薬品評価委員会臨床評価部会タスクフォース5(以下、本TF)では、共同IRB等の導入及び活用が進んでいない要因等を検討し、共同IRB等の利用促進に資するための具体的方策を検討した。また、利用される共同IRB等は適切であることが必要なため、共同IRB等に望まれる要件についても検討した。




2.2.1. IRB の設置区分状況

全1,132 件の登録件数のうち、医療機関の長又は共同設置IRB、及び公益法人が設置したIRB は883 件と78.0%を占めていた。

私立・公立・国立大学病院等の設置IRB は110件(9.7%)、独立行政法人・地方独立法人設置のIRB は132 件(11.7%)であった。




2.2.2. 共同IRB 等を利用している医療機関

日本製薬工業協会による加盟会社を対象としたアンケート調査結果 4)では、2009 年より共同IRB 等の利用状況を確認しており、その結果は図2-1 の通りであった。

2009 年度では、調査対象となった治験実施計画書71 件に参加した医療機関(重複施設を含む)のうち、26.1%(490/1,875 医療機関)が共同IRB 等を利用していた。

同様に、2010 年度は治験実施計画書数96 件で、30.8%(787/2,552 医療機関)、2011 年度は治験実施計画書数118 件で、27.0%(848/3,165 医療機関)であった。


学病院の共同IRB 等の利用状況に注目すると、その割合は、2009 年度1.1%(4/369 医療機関)、2010 年度は1.0%(4/420 医療機関)、2011 年度は1.0%(6/607 医療機関)であった。


いずれの年次においても、共同IRB 等を利用している割合は医療機関全体で30%程度と普及しているとは言えない状況にあり、特に、国公立・私立大学病院では1%程度と殆ど利用が進んでいない状況であった。




●●● 共同IRB 等の設置又は利用により期待できる効果(メリット) ●●●

●共同IRB等を有する機関

★IRB機能(審査・運営)の向上

★事務局の強化

★高資質な委員の確保

★教育訓練の充実

★広範囲で専門的な審査

★開催頻度の増加

★調査機能の充実

★資料の一元保管

★審査収入の増加、安定した運営



●審査を委託する医療機関

★業務負担の軽減

★事務局業務

★委員の確保、教育訓練

★IRB開催・審査

★資料保管

★IRB以外の治験業務へのリソース割り当て

★症例登録

★ローカル・データマネジメント

★治験スタッフへの教育訓練

★患者への治験啓発

★臨床研究

★治験依頼件数の増加




●治験依頼者

★手続き業務負担の軽減

★迅速な治験立ち上げ

★審査費用の節減





7. 終わりに

GCP 施行以降、IRB に関して主に質及び機能向上についての検討が進められてきたが、今回、本TF では共同IRB 等の普及が進んでいないという背景から、共同IRB 等の利用とその具体的方策について検討した。


共同IRB 等を単独の機能としてみた場合、IRB 集約の本来の目的はIRB 機能そのものの向上にあり、集約による業務効率化はその一過程と位置付けた。

つまり、IRB の集約により共同IRB 等に高い資質をもつIRB 委員が集約されることで、共同IRB 等はより高い専門性やより広範囲な審査機能を有し、これが治験の根幹をなす被験者の保護に資すると考えられた。

また、自施設IRB の業務が縮小した各医療機関内では、IRB 業務に関わっていたリソースを、自施設の症例集積性の向上や、治験データの品質管理、治験スタッフへの教育訓練、患者への治験啓発、又は臨床研究業務など医療機関業務の質と量を向上させることに再配分できることが期待された。

このように共同IRB 等への集約によって、リソースの適切な再配分がなされ、更に症例集積性が向上すると、医療機関への治験依頼も増加し、被験者、治験依頼者、医療機関のいずれにも良い影響をもたらすことが期待される。


実施医療機関選定における治験依頼者の最大の関心事は症例集積性にあることから、その医療機関の実施可能症例数が少なければ、通常は治験依頼者から選定を受けることはない。


しかし、単独で症例集積性が低くても、ネットワーク全体として症例集積性が高ければ、選定を受けることは十分考えられる。

ただし、ネットワーク機能を最大限発揮させるためには、共同IRB 等を利用し、手続きの効率化を図る必要性がある。


「治験等の効率化に関する報告書」(平成23 年6 月30 日医政研発0630 第1 号)2)で示されたように、複数の医療機関がネットワークで繋がり症例集積性の向上が果たせた時に、改めて共同IRB等の有用性も注目されるであろう。


外部評価機関によるIRB の認定制度は、海外ではすでに導入されており、国内でも検討されているという報告がある。

規制当局による調査の結果や外部評価機関等により、一定基準でのIRB の認定制度が生まれた場合、この水準に満たないIRB は一気に淘汰され、共同IRB 等への集約が進むかもしれない。




・・・・・・・と言う事で、今週は治験を取り巻く環境を見てきました。

まだまだ、治験システムは進歩していきます(と期待したい)。

僕らは、今、治験の転換期を迎えている。

柔軟に本質的に、治験のあらゆるシステムを活用し、1日でも早く新薬を世の中に出していきましょう。


古い慣習にとらわれず、しなやかな思考能力を持つと同時に、フットワークを軽くし、変化が激しく、流れの速い治験環境をキャッチアップしていきましょう。

過去の経験が足をひっぱる、そんな時代になってきました。




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医薬品ができるまで(治験に関する話題)

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2012年06月14日

最近の治験環境 (臨床研究中核病院の件)

●【厚労省】臨床研究中核病院に5国立大学病院を選定‐北海道、千葉、名古屋、京都、九州
   ↓
http://www.yakuji.co.jp/entry26530.html


●●● 北海道大学病院 ●●● 
  ↓
http://www.huhp.hokudai.ac.jp/topics/t_20120530.html


北海道大学病院(病院長:福田諭)は、平成24年5月25日、厚生労働省が公募した「平成24年度臨床研究中核病院整備事業」の一つとして選定されました。

本事業は、日本発の革新的な医薬品・医療機器等の創出、難治性疾患や小児疾患等の新規治療開発、最適な治療法の確立をめざし、国際水準の質の高い臨床研究を実施することを目的としています。

この中で北海道大学病院は、臨床研究中核病院としてのその中心的な役割を果たします。

事業期間は、平成28年度までの5年間で、毎年度、設備・組織等の基盤整備に5億円程度、及び研究費に1億円程度が交付され、総額約30億円となるものです。

この事業を通じて、北海道大学病院は「信頼される臨床研究」を「北海道から世界へ発信する」臨床研究拠点となるべく、尽力して参りますので、ご支援をお願いします。


●北海道大学病院 高度先進医療支援センター
  ↓
http://trctca.huhp.hokudai.ac.jp/index.php


特定機能病院である北海道大学病院は、高度な先進医療の開発を通じた医療の発展に貢献する責務を担っています。

しかし、新規医療技術の開発や信頼性の高い臨床研究の実施は、医師や研究者のみの努力で達成される時代ではありません。

専門性の高い技術や知識、経験を有したスタッフによる支援が不可欠となっております。

そのような時代の中、高度先進医療支援センターは、平成19年、北海道大学病院 高度先進医療支援センター「治験管理センター」を改組・発展させて誕生しました。

治験実施機能を充実させる一方、「自主臨床研究事務局」を発足させ、臨床研究に関する倫理指針に適合した臨床研究の実施体制を整備しました。

引き続き、細胞治療・再生医療を実現するためGMP準拠の「細胞プロセッシングルーム」を開設、更にデータセンター機能を有した「データ管理部門」を設置して、科学性、信頼性の高い臨床研究の実施への体制を確立しました。

このように、北海道大学病院で実施される臨床研究の支援、実施体制を強化する一方、「橋渡し研究支援推進プログラム」「未来創薬・医療イノベーション」などの北海道大学全体のビッグプロジェクトへの貢献も行っております。

臨床研究は、医師や研究者のみならず関連する企業や機関、そして何よりご参加いただく患者さんや被験者の方々のご協力がなければ成功いたしません。

このような皆様と力を合わせて、高度先進医療支援センターは臨床研究を通じた新しい医療の発展に貢献して参ります。





●●● 千葉大学医学 附属病院 臨床試験部 ●●●
  ↓
http://www.chiba-crc.jp/

臨床試験部は、新たな治療法の確立をめざすことを理念とし、科学的、倫理的配慮に基づいて臨床試験を円滑に実施することを目的とする組織です。

このため、医師、企業及び患者さんの間に立ち、治験を含む臨床試験の管理業務、CRC業務、治験審査委員会事前審査などを含むマネジメント業務を行っています。

また、臨床研究全体の活性化を目的として、院内に臨床研究基盤整備推進委員会を設置し、臨床研究の実施を推進しています。

さらに、医師や治験審査委員会委員を対象とした教育・研修を行うとともに、データセンターの設立準備を進めています。

新しい治療法を確立し提供していくため、多くの人とともに目標達成に向けて前進していきたいと思います。


●千葉大学医学部附属病院は、院内に「臨床研究基盤推進委員会」を設置し、本院における治験・臨床研究の基盤を整備するとともに、「新たな治験活性化5カ年計画(平成19年3月30日)文部科学省・厚生労働省」の円滑な実施を推進しています。

「千葉大学医の学部附属病院臨床研究マイスター制度 臨床研究マイスター制度 臨床研究マイスター制度 」


次世代の若者を対象とした公開講座

中学生を対象とした授業

治験環境部門賞 受賞! 

日本医師会治験促進センター「治験の効率的な実施のための医療機関等(以下、「医療機関」という)における取組み」において治験環境部門賞を受賞いたしました。

千葉大学医学部附属病院

「中学生を対象とした治験・臨床研究啓発授業の開発」

千葉大学医学部附属病院臨床試験部では、これから被験者となりうる若い世代へと治験に関して継続的に啓発活動を行う必要があると考え、中学校への出張講義を行っています。

彼らが、将来初めて被験者となる機会を持ったときに治験を知る・考えるのではなく、前もって治験について考える機会を持つことが、現在の医学はまだまだ発展途上であるということ、研究に参加する人なくしては新しい治療法を世の中にもたらすことが不可能であるということについての知識と、実際に被験者となったときに自らを守る知識とを同時に提供するだろうと考えたからです。


また、平成21年度から施行される中学校での「くすり教育」に関連する授業展開を行うことで、今までの中学校の先生の経験では困難なニーズに応えるとともに、「くすり教育」の中で治験・臨床研究についても知ってもらえるような授業づくりをめざしました。
 
昨年は、3校の中学校で7回の出張講義を行いました。

臨床研究については義務教育課程で学習する機会がないこともあり、一般的にはまだまだ知られていません。

そこで臨床研究とは何か、どのようにして行われ、なぜ必要なのかについて出張講義を行いました。
 
県立千葉中学校では、「新しい治療法の発見」と題して、中学一年生を対象として講義を行いました。

講義に先立ち、まず中学校で医療に関心のある生徒を事前に集めてゼミを作ってもらい、彼らの関心をあらかじめ教えて頂いた上で病院に招待し、病院見学をするするとともに、大学病院の役割を説明したり彼らの疑問に答えたりという機会を持ちました。

このゼミ活動を踏まえて、次の段階として、ゼミ生の一人一人に課題を与え、それを全生徒を集めた講義の中で報告してもらいました。

例えば、華岡青洲の麻酔、胃カメラの研究、動物実験の必要性などについてです。



生徒たちによる報告について講師がコメントを交えながら、医学のこれまでの歴史、医学はまだ完全ではないということ、そして医学の発展における臨床研究の重要性について説明することで、生徒と一緒に医学と臨床研究について考えるという授業を行うことが出来ました。
 
野田市立第二中学校・福田中学校では、「うわ、動いている!きみの心臓を見てみよう」と題して、中学二年生を対象として6つのクラスで実験を交え授業を行いました。

これは通常の理科の時間を使った授業であったことから、学習指導要領の内容を発展させる形で臨床研究に関する授業を行うことが重要になりました。

本授業では、中学理科の「感覚と運動のしくみ 生命を維持するはたらき」という単元を発展させる内容とし、また全体の時間も50分のプログラムとすることで他の中学校での実施も見据えた授業となりました。

実際の授業は、生徒たちに運動前後の心臓の働きの違いを心エコーを使い実際に見ることで興味を引き出しつつ、比較することの科学的な意味を考えさせるとともに、また比較によって可視化される差を差別に結びつけることのないよう倫理的な視点を織り交ぜながら最終的には臨床研究の重要性を説明する授業となりました。
 
どちらの授業も講師が一方的に話すのではなく、生徒と一緒に授業を作り上げる構成が、生徒や開催校の先生たちに好評でした。

若い世代への啓発活動なので、治験・臨床研究への参加者が目に見えて増えるといったことはありませんが、子どもたちが家に帰ってから家族と話をするときの話の種になるよう、薬の飲み方について記載のある下敷きを配るなどして、家族の中で考えるということも念頭に置いて活動をしています。





●●● 名古屋大学医学附属病院 先端医療・臨床研究支援センター ●●●
  ↓
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/cctcr/

名古屋大学では組織としての関与を強化したGCP準拠の先端・先進医療開発の実施を推進するため、2010年6月、トランスレーショナル・リサーチ推進を目的に2002年に文部科学省の指導の基で医学部附属病院内に設置した遺伝子・再生医療センターと、治験推進を目的に1999年に設立した治験管理センターを母体とし、2003年に設置した臨床研究推進センターを統合し、先端医療・臨床研究支援センターを発足しました。

これによりトランスレーショナル・リサーチから治験に至る先端・先進医療開発を一元的に捉えることのできる組織としました。


名古屋大学医学部附属病院では、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)の拠点として2002年に全国でも有数の規模を誇る遺伝子・再生医療センターを設置し、これまでにわが国初の純国産技術による遺伝子治療や細胞・再生医療を実施するなど大きな成果を挙げています。

また、2005年度からは国際標準化機構ISO9001:2000,及びISO13485:2003の認証を取得し、国際的な品質保証とGMP基準を満たすバイオマテリアルの調製を可能にするとともに個々のプロジェクトが標準手順書(SOP)に基づいて行われる先端医療開発への道を開きました。

 
一方、治験の管理を目的として設置された臨床研究推進センターは、2007年度から国の施策である「治験活性化5カ年計画」の治験拠点医療機関に選定され、治験並びに臨床研究を適切に実施できるよう体制を整備してまいりました。

名古屋大学医学部及び附属病院には先端医療に関して100数十を超えるシーズがあり、特許取得ないし特許出願を果たしています。

これらを順次臨床応用へと進めてゆくためには両センターの機能を集約することが必須であり、このたび、両センターを統合し、先端医療・臨床研究支援センターを設立いたしました。

 
今後は、このセンターを中心に名古屋大学の叡智を結集して21世紀の医療を切り開く先端医療技術の開発と臨床応用を推進し、最先端の医療を世界に発信するとともに、最高水準の医療を国民に提供する所存であります。


名大病院のミッションの一つである"次代を担う新しい医療を開拓する"ため、先端医療・臨床研究支援センターが開設されました。

先端医療開発や医工連携などにおける実用化研究の支援、並びに臨床研究・治験の適正かつ円滑な実施の支援を行います。

構成はセンター長(兼任)、専任教員 3名(予定)のもと、先端医療支援部門では技師 6名、事務1名が、臨床研究支援部門では、治験事務5名、IRB事務・治験薬管理5名、CRC13名、データマネージャー2名、教育・研究担当3名が業務の実施にあたっています。

 
先端医療支援部門では 国内最大級のバイオマテリアル調製室を有し、その運営は国際的な品質保証の基準に基づいて厳密な管理下で行われています。

ここでは遺伝子製剤、 培養細胞、 培養組織など、 新しい医療に欠かせない生物製剤を診療科に提供し先端医療を支援しています。


また臨床研究支援部門では、新薬の効果や安全性を調べる「治験」や上記の「先端医療」のほかさまざまな臨床研究について、法令や指針を遵守しつつ、科学的かつ倫理的にすすめるための支援を行っています。

 
先端医療と臨床研究を包括的にマネージするため、従来の「遺伝子・再生医療センター」と「臨床研究推進センター」を2010年6月に統合しました。

そして、ヒトを対象とし介入を伴う研究はすべてこのセンターが窓口となって、研究プロトコールの作成から遂行・解析までの支援を行います。

 
先端医療のシーズ開拓のため、特許フェアやトランスレーショナル・リサーチ懇話会などを開催し、情報の発信と産官学の交流に努めています。

また毎年、市民公開講座を開催し、臨床試験の重要性を啓発するとともに、国民の医療に対する関心を高めるよう努力しています。

また、国の施策である新たな「治験活性化5カ年計画」において、治験拠点医療機関に選定されています。






●●● 京都大学医学部附属病院  先端医療機器開発・臨床研究センター ●●●
  ↓
http://crcmed.kuhp.kyoto-u.ac.jp/index.html

京都大学医学部附属病院は、安全で質の高い医療の提供、新しい医療技術・治療法の開発と実践、人間性豊かな医療人の育成という使命・役割を担っています。

当センターは、この附属病院の組織として、革新的な医療機器の迅速な実用化を図るとともに医療機器開発を担う人材を育成することを目的に、平成23年4月1日に設立されました。

 
超高齢化社会を迎え、医療分野でのイノベーションが強く求められています。

これを実現するために、基礎研究の成果を臨床応用に橋渡しする「トランスレーショナルリサーチ」の重要性が認識されています。

また、研究開発の体制においては、従来の自前主義を打破し、必要となる研究開発力、知見、人的資源などを外部から獲得して効率的なイノベーションを目指す「オープンイノベーション」が世界の潮流となっています。

当センターは、医療イノベーションに対する期待に応えるべく、医療機器・医療技術の次世代化のための研究プロジェクトに取り組みます。


特に、我が国における医療機器開発のボトルネックである臨床研究に重点的に取り組む本格的な産官学連携拠点として、附属病院が持つ医療開発・臨床試験支援体制との効果的・効率的な連携により、医療機器の臨床研究から薬事申請までの一連の流れを迅速にかつ適切に実施し、革新的な医療機器の実用化を推進します。

近い将来、当センターで開発された医療機器・医療技術や人材が、必ずや患者さまの治療に貢献するものと期待しております。

 
最後になりましたが、当センターは、経済産業省の補助金、キヤノン株式会社の寄付金で建設されたものであります。

また、京都市、多くの企業の方々のご支援を得て運営を行っています。

ご協力頂きました皆様に改めて感謝するとともに、これからも変らぬご支援をいただきますようお願い申し上げます。



京都大学の持つシーズ、附属病院の持つニーズとインフラ、産業界が持つシーズとものつくり技術を連動させることで、迅速な医療機器の開発が可能となります。

当センターは、京都大学医学部附属病院における医師主導型治験の経験や「医の倫理委員会」などの臨床試験支援体制、産学連携の加速化に向けて整備された知財制度の活用、さらには先端医療開発特区(スーパー特区)の活動を通して、これまで日本における医療機器開発の弱点とされてきた臨床研究を迅速かつ適切に推進します。
 
特に、医療機器は絶え間ない改良・改善を通して発展するものであることから、その実用化においては探索的な臨床研究が重要となります。

当センターでは、医工連携、産官学連携プロジェクトでの医療機器開発を加速するために、開発する機器の特性に適した探索的臨床研究を重点的に実施します。



当センターは、医療ニーズの高い革新的な医療機器を継続して創出する、日本で初めての本格的な産官学連携拠点として設置されました。

高度先進医療を先導している京都大学医学部附属病院の施設として、医療機器の臨床研究から薬事申請までをサポートします。

京都大学が擁する探索医療センター、「医学領域」産学連携推進機構などの医療開発・臨床研究支援体制と効率的・効果的に連携しつつ、産業界、地方自治体と共同で、革新的な医療機器の創出による医療イノベーションの実現を加速します。





●●● 九州大学医学部附属病院  ARO次世代医療センター(先進医療・治験) ●●●
  ↓
http://www.med.kyushu-u.ac.jp/crc/index.html


ARO次世代医療センターは、現在開発中・研究中の治療方法を患者様・地域社会に紹介する九州大学病院の窓口です。

公正でオープンな、かつ個人情報保護を重視した臨床研究を行います。

皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。


基本方針

1.九州大学病院における臨床研究の適正かつ迅速な推進を支援することを目的とする。



2.そのために、運営委員会、臨床研究支援部、事務部門、医薬品等管理部門、CRC部門、広報部門、教育研修部門、監査委員会(安全性監査委員会、試験監査委員会、経理運営監査委員会)を置く。



3.運営委員会は臨床研究センター運営方針を決定する最高の議決機関とする。 



4.臨床研究支援部には、専任の医師を置き、迅速かつ適切な運営を実施するために臨床研究支援医師(100人部会)を置く。
* 100人部会は、九州大学における臨床研究の推進と質の向上を果たすための教育・実践の基盤となる組織である。



5.センターの合理的かつ正確な事務作業を進めるために事務部門に専任の事務官を置く。


6.医薬品等管理部門は、治験に加え、先端医療に関する薬品等の保管と品質管理も行う。
* トランスレーショナルリサーチセンター構想との連携の上に、今後の運営を行う。



7.CRC部門は、治験を含む臨床試験の迅速かつ適切な遂行のための支援を行う。


8.広報部門は、地域医療連携室や地域の関連医療機関との連携の下に、臨床研究の適切な推進のための広報活動を行う。
* 地域医療との連携をはかるために今後広範囲な活動を推進する。


9.教育研修部門は、九州大学における臨床研究の質を向上させるために、各種教育プログラムを実施する。
*各種教育プログラムは、九州大学における臨床研究認定医証の発行を含め、臨床研究の基盤となる人材養成の基盤となるものである。


10.臨床研究における各審査委員会との業務・規約の調整を行う。


11.各監査委員会は、臨床研究センターの適切な運営、臨床研究の安全な遂行、ならびに臨床研究実施施設(診療科)の研究の質を向上させるための監査活動を行う。
*将来的には、各種の審査委員会に業務委嘱をすることを目標とする。
*外部委員の導入については将来構想として検討を進める。


12.倫理審査委員会・IRBとの緊密な連携の下に、適切で透明な臨床研究の実施を推進する。


13.短期的目標として、治験実施率の改善(50%から85%へ)、治験受け入れ件数の増加(年間30%の増加)、医師主導型治験(GCP準拠)の実施を目指す。


14.臨床研究センターの活動支援医師に対するインセンティブの生産を目指す。

*臨床研究センター支援活動従事経験を九大の公式履歴書に様式として記載する項目設置。

*臨床研究センター支援活動に対するauthorshipの獲得。

*臨床研究センターにて支援した臨床研究の論文化支援。

*治験業務参画に対する社会的評価の宣伝。


15.中期的目標として、倫理的で良質な臨床研究を推進するARO(Academic Research Organization)への発展を目指す。

そのために組織運営のあり方については、常に改善を意識した運営を行う。

16.データマネージメントに関する部門の設置を目指す。
(現状では、九州大学病院とは独立した組織として、NPO、中間法人を視野に入れた調査活動を行う。)


・・・・・・と言うことで、臨床研究中核病院に選ばれた5国立大学病院の‐北海道大学医学部、千葉大学医学部、名古屋大学医学部、京都大学医学部、九州大学医学部の付属の病院のみなさん、期待しています!!



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2012年06月13日

最近の治験環境 (データ・モニタリング委員会運営のためのガイダンスの件)

今日は「中間解析実施とデータ・モニタリング委員会運営のためのガイダンス」を見ましょう。

「中間解析実施とデータ・モニタリング委員会運営のためのガイダンス」


*** 以下、引用 ***

データ・モニタリング委員会 (Data Monitoring Committee, DMC) とは,進行中の臨床試験の中で蓄積されるデータを定期的にレビューし,その結果に基づいて試験継続の適切性や計画変更の必要性を治験依頼者に勧告するために設置される専門家委員会である (Ellenberg et al., 2002).

DMCは臨床試験を計画,実施する治験依頼者の内部,外部いずれにでも設置することができる.

検証的試験では,通常治験依頼者とは独立の外部機関にDMCを設置して,その独立性を担保するべきである.



DMCは,臨床試験においてモニタリングの役割を担っている.

ここでのモニタリングとは,試験の質の監視と関係したモニタリングではなく,試験治療の比較のために割付を明らかにするモニタリング (中間解析) を指す (ICH, 1998).

効果安全性評価委員会 (Data and Safety Monitoring Board, DSMB) と呼ばれることもある.

DMCは,通常,治療領域の専門知識を有する医学専門家,臨床試験や試験データの逐次解析の統計的方法論についての知識を有する生物統計専門家,被験者に対する危険性の高い試験の場合には,臨床試験の計画,実施,解釈についての知識を有する臨床倫理の専門家などで構成される.



DMCの最も基本的な責務は,臨床試験の中間データをレビューし,被験者の利益を保護することを第一義として,試験を計画通りに続行することの適切性に関して治験依頼者に勧告を行なうことである.

試験を継続してよいが,安全性上の懸念や実施上の問題が理由で,試験デザインの一部を変更すべきという勧告 (たとえば,低用量への変更や追跡不能を減らすための手順の変更) をDMCが行なうこともある (Ellenberg et al., 2002).



近年,欧米を中心に急速に普及しつつあるアダプティブ・デザインにおいても,DMCは重要な役割を果たす.

アダプティブ・デザインは,臨床試験の継続中に,その試験で集積されているデータに基づいて,試験の妥当性およびインテグリティを損なうことなく,試験デザインのいくつかの側面の変更方法を決定する多段階 (ステージ) 試験デザインとして定義される (Dragalin, 2006).

試験デザインの変更には,被験者の割付け比率の変更,特定の治療群の中止を含めた用量設定,主要評価変数の変更,目標症例数の再設定などが含まれる.



欧米では中間解析の利用は1960年代から始まり,そのノウハウも蓄積されている.

本邦では,これまで大規模で長期間に及ぶ臨床試験がほとんど行なわれてこなかったため,中間解析の利用機会は限られていた.

しかしながら,近年では,抗癌剤以外でも,死亡や心事故などの真のエンドポイントを観察する臨床試験が増加したことに加え,2000年以降EDC (Electronic Data Capture) の普及にともなって収集,クリーニングされたデータが迅速に活用可能となり,中間解析の利用機会が拡がった.

このように,臨床試験で中間解析を活用する機会が増えてきている現状において,被験者の利益を保護するとともに情報の機密性を保持し,臨床試験が科学的かつ倫理的な観点から適切に実施されることを監視する DMC の役割は益々その重要性を増してきている.

治療領域の薬効評価に精通し臨床試験の逐次解析の統計的方法の知識と経験を有する生物統計専門家は,その中で中心的役割を果たすことになる.

しかしながら,日本ではDMC委員として必要な専門知識や経験を有した生物統計専門家は限られている.

またDMCの統計専門委員が盲検解除をともなう中間解析を実際に行なうケースは少ない.

このような状況では,治験依頼者と独立した統計解析センターの役割をCRO (Contract Research Organization) に委託して,中間解析の実施とともにDMCと連携して中間解析の機密情報を厳重に管理することが現実的な対応と考えられる.



臨床試験のオペレーション・バイアスを最小化して中間解析を計画,準備及び実施する上で,治験依頼者が留意すべき事項について一定の議論はあるものの (日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 統計・DM部会, 2009),統計解析センターとDMC 運営のサポート機能の役割を担う CROと協働し,個々の詳細な業務や役割分担を双方が十分に認識しておくように詳細な手順を確立する必要がある.

中間解析業務を委託する側(治験依頼者)及び受託する側(CRO)が,中間解析を抜け漏れなく協働で準備,実行できるような実務に即した指針が望まれる.



日本製薬工業協会 (JPMA) と日本CRO協会 (JCROA) は,検証的臨床試験で盲検解除をともなう中間解析が行なわれる場面を想定して,治験依頼者及びCROが安心して中間解析を実施しDMCを運営するための協働ガイダンスを作成した.

この指針を活用して経験を積むことによって,本邦における更なる臨床試験環境の基盤整備が進むことを期待する.


*** 引用終わり ***


治験には様々な疾患に対して行われます。

場合によっては「効果安全性評価委員会」を設置したり「中間解析」をすることもあります。

たとえば「最終目標症例数は200例であるが、100例が集積された段階で中間解析を実施する」とかです。

あるいは抗がん剤の治験においては「卵巣がんの治験で、最終目標症例数は60例であるが、20例のデータが得られごとに、効果安全性評価委員会で効果と安全性のデータを分析し、治験を進めるかどうかを判定する」などですね。


あなたもいつ、そんな治験に関わるかもしれません。

今のうちに「「中間解析実施とデータ・モニタリング委員会運営のためのガイダンス」を読んで知識を増やしておきましょう。




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2012年06月12日

最近の治験環境(臨床研究・治験活性化5か年計画2012の件)

今日は「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」を見ます。

「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」

ちなみに、上記のスライドの2ページ目に「治験届提出の推移」が出ていて、それを見ると、あたかも「新たな治験活性化5か年計画」のおかげで治験届が増えていると主張しているようですが、そうですかね?

私は、どちらかと言えば「治験のネタ」が製薬会社・ベンチャー企業で増えてきたからだと思えるのですが・・・・・・。

まぁ、それはさておき、「1.9年間の活性化計画を踏まえたさらなる 飛躍と自立」はとても良いことです。

(1)症例集積性の向上

(2)治験手続の効率化

(3)医師等の人材育成及び確保

(4)国民・患者への普及啓発

(5)コストの適正化

(6)IT技術の更なる活用 等


なかでも、今後、飛躍的に伸びることが期待されるのは「(6)IT技術の更なる活用」ですよね。


<短期的に目指すこと>

・IRB等の業務のIT化

・EDCの利用の促進

・リモートSDV実施に向けた調査、研究


<中・長期的に目指すこと>

・病院情報システムとEDCとの連動への取組

・SS-MIX標準化ストレージやCDISC標準の導入の検討

・クラウドコンピューティングの活用等についての検討

・一定のルールを設けた上での、大規模医療情報データベースの在り方の検討


私たちが接している治験の現場としては「EDCの利用の促進」と「リモートSDV実施に向けた調査、研究」、「クラウドコンピューティングの活用等についての検討」が仕事に直結しています。

*クラウドコンピューティングとは・・・ネットワーク、特にインターネットをベースとしたコンピュータの利用形態である。ユーザーはコンピュータ処理をネットワーク経由で、サービスとして利用する。

参照サイト
 ↓
「クラウドコンピューティング」



なお、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」のスケジュール(案)としては、今年の8 月下旬頃には「「臨床研究・治験活性化に関する検討会」にて「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」アクションプラン(原案)の報告。」を予定しているようです。

また「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」アクションプラン 作成例も紹介されています。
 ↓
「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」アクションプラン 作成例



大いに期待しましょう!



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