●ヘモグロビンA1cの国際標準化について
2012年4月1日より、ヘモグロビンA1cの値は国際標準化され、NGSP値(National Glycohemoglobin Standardization Program:国際標準値)が採用されました。
しばらくは、これまでのJDS値(Japan Diabetes Society:日本糖尿病学会値)も併記されますが、最終的にはNGSP値だけの表示となります。
●糖尿病の診断
日本では、日本糖尿病学会が2010年7月より新しい診断基準を施行した。(従来の診断基準は1999年に施行されたもの)
新基準では、血糖値だけでなくヘモグロビンA1c(HbA1c)の基準も設けられた。
血糖値(空腹時血糖値、75gOGTT2時間後血糖値、随時血糖値)及びHbA1cの検査結果で判定を行う。
正常型・・・110未満(空腹時血糖(mg/dl))、140未満(2時間後血糖(mg/dl))
境界型・・・126未満(空腹時血糖(mg/dl))、200未満(2時間後血糖(mg/dl))
糖尿病型・・・126以上(空腹時血糖(mg/dl))、200以上(2時間後血糖(mg/dl))
●血糖値関連の検査
▼血糖値
血糖値は、食事を食べたり運動をしたりすることで容易に変動する。
朝起きてから食事を取らずに測定した空腹時血糖と、どんなとき測ってもよい随時血糖が評価の対象である。
常用負荷血糖(普段の食事をして測定した血糖)では、食事開始(はしをつけて)から1時間後のpostprandial glycemia 1hr(PPG1hr)がピークとなることが多いとされ、有望視されている。
▼ヘモグロビンA1c(HbA1c
過去1-2ヶ月の血糖値の平均値を表すとされる。
HbA1c 6.5%未満をコントロール良好とする。
食生活による変動が激しいことも知られており、最近過食気味といったエピソードがあるだけで糖尿病かの診断では偽陽性となっていまうことがある。
肝硬変、溶血の患者では低めに出ることが知られており、その場合はグルコアルブミンを代用することがある。
HbA1cは5.8%以下で正常、6.5%以上で糖尿病と言われているが、OGTTに基づく診断では正常型、境界型、糖尿病型の各型とも広範囲に分布するためoverlapすることが多く、境界型糖尿病の診断や糖尿病の否定などには用いることができないといわれている。
5.8%より大きい値が出たら境界型糖尿病なども疑い精査する必要がある。
●糖尿病合併症
●糖尿病は合併症の病気といわれているように、糖尿病コントロールの主目的は合併症発症予防と進展の抑制となります。
糖尿病の合併症とは、一般的に急性合併症と慢性合併症に大別されます。
●急性合併症の代表例としては、糖尿病性昏睡と急性感染症があげられますが、これらは治療の進歩(特にインスリン療法)により、発症とその予後(経過)は著しく改善されています。
しかし、未だに克服されたとは言えず、意識障害を来たし、多くの臓器障害まで併発する可能性を含んでおり、生命予後に関わってくる重篤な病態と考えるべきです。
●通常、糖尿病の合併症という場合は、慢性合併症のことを指します。
慢性合併症は、成因やその病態から血管障害合併症とその他の合併症に分けられます。
さらに血管障害は、細小血管障害と大血管障害(動脈硬化性血管障害)とに分けられます。
細小血管障害は、細小血管(毛細血管)の病変から始まる病態で、糖尿病に特徴的な合併症です。
代表的な例は、網膜症、腎症、神経障害で、この三者を糖尿病性三大合併症といいます。
これに対して大血管症は、動脈硬化に由来する合併症で、糖尿病に特異的とはいえず、糖尿病自体が危険因子となり、他の危険因子(高血圧、高脂血症、肥満、喫煙など)と絡み合って、糖尿病の罹病経過とは無関係に発症してきます。
●糖尿病性網膜症とは?
網膜には栄養を補給する多くの血管が走行しています。
高血糖状態が長く続くと、この血管がもろくなったり、一部が膨らみコブをつくり(動脈瘤)出血します。
また、小さな血管が血栓でつまったり、つまって血流が途絶えた部位に血流を補充するために新しい血管(新生血管)ができてきたりします。
この新生血管は、急ごしらえのため非常に脆く、ちょっとしたことで出血を起こす原因ともなります。
これらが進行していくと、失明に繋がってくるのです。
●糖尿病の慢性合併症のうち、目に起こるものの中で最も重要なものが糖尿病性網膜症です。
何故なら一度進展してしまうと治りにくく、しばしば失明の原因となるからです。
現在日本において、年間3000人の人が糖尿病が原因で失明しており、中途失明の原因の第一位となっています。
●糖尿病性腎症
腎臓は、身体の中でいらなくなった老廃物を含む血液を濾過して、老廃物を尿として体外に排出するとともに、きれいになった血液を体内に戻すという極めて重要な働きをしています。
この血液を濾過する役割をしていのが、腎臓の糸球体と呼ばれる場所です。
この糸球体は毛細血管の塊でできており、高血糖が長期間続きますと、網膜と同じく血管障害や膜に変化が起きてきて濾過機構が破綻してしまいます。
この状態が糖尿病性腎症といわれるものです。
糸球体が担っている濾過機能は、正常の状態においては身体に必要なタンパク質などが外に漏れでないように調節されています。
しかし腎症に陥った状況下では、大事なタンパク質などが尿として身体の外に漏れ出てしまうのです。
これが蛋白尿で、蛋白尿が多量になりますと血液中の蛋白濃度が下がり、むくみ(浮腫)や血圧上昇などを招き、老廃物の排出低下も相俟って腎不全や尿毒症に移行してしまうのです。
●糖尿病性神経障害
糖尿病の三大合併症のうち、最も早期に出現してくるのが、糖尿病性神経障害です。
神経障害は、網膜症や腎症と同様に高血糖が持続することにより神経が変性したり、神経を栄養する毛細血管の障害で血流が低下することなどで生じてきます。
糖尿病神経障害は、大きく末梢神経障害と自律神経障害に分けられます。
★末梢神経障害とは?
末梢神経には、痛みや温度を感ずる感覚神経と、手や足などを動かす運動神経があります。
高血糖が持続すると、まず長い神経の末梢の感覚神経から障害が現れてきます。
すなわち、手や足の先から、そして左右対称に出現してくるのが特徴です。
例えば、手や足の指先がじんじんしたり、しびれや痛みを感じたり、虫が這っているような知覚異常としてみられます。
さらに進行すると運動神経にも障害が現れ、筋肉に力が入りにくくなったり、顔面神経麻痺や外眼筋(目を動かす神経の動眼神経や滑車神経)麻痺を生じて物が二重に見えたりするようになります。
これら末梢神経障害のために、怪我をしたり炬燵などで火傷をしても気付くのが遅れ、そこが化膿して壊疽を起こしてしまう重大な合併症を招くこともあります。
★自律神経障害とは?
自律神経は、全ての内臓(心臓、肺、胃、腸、膀胱、子宮など)や腺(内分泌腺、汗腺、唾液腺など)、血管などを支配し、自分の意志とは無関係に、生体のホメオスターシスを維持するのに必要な機能を行っています。
すなわち、呼吸、循環、物質代謝、体温調節、消化、分泌、生殖など、無意識に行われている機能を調節しているのです。
したがって、自律神経に障害が生ずると様々な症状が出現する可能性があります。
例えば、胃のもたれ(胃無力症)、便秘や下痢、起立性低血圧による立ちくらみ、排尿困難やインポテンスなどの症状が現れます。
また、低血糖が起こっても動悸や発汗などの警告症状が出現せず重症化する可能性もあり、心筋梗塞が起こっても痛みに気付かず(無痛性心筋梗塞)重篤化を招くこともあり注意を要します。
●インスリン
インスリン(インシュリン、insulin)は、膵臓に存在するランゲルハンス島(膵島)のβ細胞から分泌されるペプチドホルモンの一種。
名前はラテン語の insula (島)に由来する。
21アミノ酸残基のA鎖と、30アミノ酸残基のB鎖が2つのジスルフィド結合を介してつながったもの。
C-ペプチドは、インスリン生成の際、プロインスリンから切り放された部分を指す。
生理作用としては、主として血糖を抑制する作用を有する。
骨格筋におけるグルコース、アミノ酸、カリウムの取り込み促進とタンパク質合成の促進、肝臓における糖新生の抑制、グリコーゲンの合成促進・分解抑制、脂肪組織における糖の取り込みと利用促進、脂肪の合成促進・分解抑制などの作用により血糖を抑制し、グリコーゲンや脂肪などの各種貯蔵物質の新生を促進する。
腎尿細管におけるNa再吸収促進作用もある。
炭水化物を摂取すると小腸でグルコースに分解され、大量のグルコースが体内に吸収される。
体内でのグルコースは、エネルギー源として重要である反面、高濃度のグルコースはそのアルデヒド基の反応性の高さのため生体内のタンパク質と反応して生体に有害な作用(糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の微小血管障害)をもたらすため、インスリンの分泌によりその濃度(血糖)が常に一定範囲に保たれている。
インスリンは血糖値の恒常性維持に重要なホルモンである。
血糖値を低下させるため、糖尿病の治療にも用いられている。
逆にインスリンの分泌は血糖値の上昇に依存する。
従前は「インシュリン」という表記が医学や生物学などの専門分野でも正式なものとして採用されていたが、2006年現在はこれらの専門分野においては「インスリン」という表記が用いられている。一般にはインスリンとインシュリンの両方の表記がともに頻用されている。
●インスリンの歴史
1869年にドイツベルリンの医学生パウル・ランゲルハンス (Paul Langerhans) は、顕微鏡で見た膵臓の構造を研究していた。
後にランゲルハンス島として知られる「小さな枠の集合体」は当時まだ知られていなかったが、エドワール・ラゲス (Edouard Laguesse) は、それらが消化に関わる大きな役割を果たすものであり得ると主張した。
1889年、リトアニア出身のドイツの内科医オスカル・ミンコフスキ (Oskar Minkowski) とヨーゼフ・フォン・メーリング (Joseph von Mehring) は健康な犬の膵臓を取り除く研究を行った。
実験が始まって数日後、ミンコフスキーはハエがいつもこの犬の尿に群がっていることに気付いた。
尿を調べてみると、糖分が含まれており、ここで初めて膵臓と糖尿病との関係が実証された。
1901年、アメリカの病理学者ユージン・オピー(Eugene Opie)によりランゲルハンス島と糖尿病との関連が明らかにされたとき、この研究は新たな段階を迎えた。
つまり、糖尿病はランゲルハンス島の部分的あるいは全体的な破壊によって引き起こされるということがわかったのである。
しかしながら、ランゲルハンス島が果たす特定の役割については、ここではまだよくわかっていなかった。
それから20年、これに連なる数々の研究が科学者の間で行われた。
1921年には、カナダの整形外科医フレデリック・バンティング(Frederick Banting)と医学生チャールズ・ベスト(Charles Best)が研究室でインスリンの抽出に成功した。
1922年1月11日、当時14歳であった1型糖尿病患者に世界で初めてインスリンの投与が行われたが、これは、精製方法が未熟であったこともあり、患者にひどいアレルギー反応がでたため中断された。
バートラム・コリップは、それから12日間投与量などの改善に日夜努力し、23日に再び投与が行われた。
今度は副作用を引き起こすこともなく、糖尿病の症状を取り除くことにも成功した。
しかしながら、バンティングとベストはコリップを一種の闖入者と見なしたようで不和を生じたため、その後すぐにコリップは去って行った。
1922年の春が過ぎ、ベストは大量の需要にも応えられるように抽出技術を工夫したが、精製は未熟であった。
1921年の発表の直後、イーライリリー社から、彼らは支援の申し出を受けており、4月にこの申し出を受けた。
11月にリリー社は技術の革新に成功し、非常に純粋なインスリンの生産に成功した。
このインスリンは、アイレチンという名ですぐ市場に出された。
●インスリン製剤の種類
1921年にインスリンの分離に成功。
1型糖尿病における薬物療法として、現在のところ唯一の治療法である。
インスリンは蛋白質であるため、消化管内で速やかに分解されるため経口投与不可能である。
そのため皮下注射によって投与することが多い。
インスリン製剤は、作用発現時間、作用持続時間、原料となる動物種(牛、豚、人)によって分類されている。
組み換えDNA技術によってヒト型インスリンが開発されてからはヒト型を用いるのが一般的である。
ヒト型インスリン は大腸菌や酵母菌にヒトインスリン遺伝子を導入しインスリンを生産している。
●作用時間によるインスリン製剤の分類
インスリン製剤は作用発現時間や作用持続時間によって超速効型、速効型、中間型、混合型、持効型溶解溶解に分類される。
持続型 (ultralente, U)というものも存在するが、近年ではあまり用いられない。
インスリン製剤はカートリッジ製剤、キット製剤、バイアル製剤がある。
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