2011年10月08日

新薬開発のマネジメント(11)新薬を1番に出すことのメリット

かりん「新薬を世の中にいち早く出すことは患者さんには多くのメリットを提供するけれど、製薬会社においての意義はどうなの?」

アロウ「そうだね。たとえば、今まで治療薬そのものが無かった領域に、世界で初めて治療薬を出す、という場合は、製薬会社にも多大なるメリットを与えると思うよ。」

かりん「たとえば?」

アロウ「ある領域に一番乗りすれば、独占的に利益を確保できる。」

かりん「なるほど。確かに類似薬が出るまでは独占状態が続くわね。」

アロウ「販売ネットワークなどの希少資源を先取りすることもできる。」

かりん「社会的な栄誉も与えられるわよね。」

アロウ「新薬を素早く出すということは、開発期間が短い、という意味でもあるよね。」

かりん「そうね。」

アロウ「開発期間が短い会社は、他社からの攻撃にも素早く反撃できる。」

かりん「それは、つまり2番手が追いかけてきたとき、それに負けない新薬を世の中に提供するまでの時間が短くてすむ、ということね。」

アロウ「そういうこと。それに、開発期間が短くできる会社は、市場・技術予測精度の向上にもつながる。」

かりん「それは、どういうこと?」

アロウ「たとえば、新薬の開発スピードが2年のX社と5年のY社があるとするね。」

かりん「うん。」

アロウ「仮に両社が2011年10月1日に新薬を出すことになったとするね。」

かりん「うんうん。」

アロウ「Y社は新薬開発に5年かかるので発売2年前の2006年10月に新薬開発に着手しなければならない。一方X社は開発期間が2年なので、2009年10月に開発に着手すればいい。」

かりん「そうなるわね。」

アロウ「ここで大きく違うのは、Y社が「5年先」の将来市場を予測して企画を立て、新薬開発を行わなければならないのに対し、X社は「2年先」を予測すればよい、ということだ。」

かりん「なるほど。」

アロウ「企画段階ではより近い将来の市場ニーズを予測すれば済むので、予測が正確になる。」

かりん「それに、技術面でも、新薬開発に採用する技術の選択基準を遅くできるので、より新しい技術を採用できるわね。」

アロウ「そうそう。新薬開発などの創薬分野は市場や技術の変化が激しいので、こうした点は重要な競争優位の源泉になる。」






■■■ 医薬品ができるまで(治験に関する話題) ■■■
   ↓
医薬品ができるまで(治験に関する話題)


●メルマガの登録はこちら
   ↓
「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
   ↓
モニターとCRCのためのGCPメルマガ


■■■仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法 ■■■
          ↓
「仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法」の紹介サイト。


■ハードボイルド・ワンダーランド日記(半径5mから150億光年の出来事)
   ↓
ハードボイルド・ワンダーランド日記


posted by ホーライ at 03:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 新薬の開発という仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月06日

新薬開発のマネジメント(10)『学習する組織になる』

おかめ「新薬開発の研究開発プロセスで競争優位に影響を与える『デシジョン』の判断能力と『プロトコルデザイン』能力は、個人ではなく、複数の組織メンバーからなるグループやチームとして発揮されるわね。」

アーリータイムズ「そういう『組織能力』が欠かせない。」

おかめ「組織能力は、単なる個人の能力や知識の寄せ集めではないね。」

アーリータイムズ「転職や定年によってメンバーが入れ替わったも組織内に残り、世代を超えて継承される知識や行動パターンが組織能力と言えるわね。」

おかめ「デシジョン能力やプロトコルデザイン能力は、そのノウハウを容易に得られるものではない。」

アーリータイムズ「多くのプロジェクトを実際に経験することによって、初めて獲得することができるものだ。」

おかめ「実際、臨床開発能力が高いと言われている製薬会社は、他の大手製薬会社よりも多くの臨床開発プロジェクトを経験しているよね。」

アーリータイムズ「経験からくる知識やノウハウが重要だ。」

おかめ「自社開発をやっている会社は、導入製品だけを開発している会社には無いノウハウが構築されるのも特徴だね。」

アーリータイムズ「新薬の研究開発プロセスの上流(非臨床試験等)では、組織管理的マネジメントの役割が限定的で研究者個人に依存していることが多いけれど、臨床開発を中心とした下流ではデシジョン能力やプロトコルデザイン能力という2つの組織能力が研究開発の成果に大きな影響を与える。」

おかめ「その組織能力には臨床開発プロジェクトの経験がものを言う。」

アーリータイムズ「でも、数多くやればいいという話でもないわね。」

おかめ「経験の質をコントロールするのも重要だ。」

アーリータイムズ「学習する組織になるってことね。」

おかめ「まだまだ、頑張らないとね。」

アーリータイムズ「まったく。」



■■■ 医薬品ができるまで(治験に関する話題) ■■■
   ↓
医薬品ができるまで(治験に関する話題)


●メルマガの登録はこちら
   ↓
「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
   ↓
モニターとCRCのためのGCPメルマガ


■■■仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法 ■■■
          ↓
「仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法」の紹介サイト。


■ハードボイルド・ワンダーランド日記(半径5mから150億光年の出来事)
   ↓
ハードボイルド・ワンダーランド日記

posted by ホーライ at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新薬の開発という仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月05日

新薬開発のマネジメント(9)『失敗を減らす』

おかめ「通常、プロトコルの作成は数人の担当者で作るけれど、ときには1人でやっている会社も多い。」

アーリータイムズ「だから、個人の能力に依存する部分も確かにあるわね。」

おかめ「大きい会社ならプロトコルを専門に作る部署もあるけれど、小さな会社だと、モニターがプロトコルを作る場合もある。」

ホーライ「僕も作ったよ。」

おかめ「え〜〜!どうだった?」

ホーライ「先行する他社の治験がある場合は、いろんな情報をたぐり寄せて、その先行している治験のプロトコルを参考にする場合もあるし、海外で治験が先行している場合は、海外のプロトコルを参考にしたりしたね。」

おかめ「プロトコルのデザイン能力も製薬会社によって様々だね。スキルが高い会社もあれば、あら?という会社もある。」




アーリータイムズ「新薬を共同開発する場合もあるよね。」

おかめ「あるある。」

アーリータイムズ「例えば、それまで内服薬として使われていた抗菌剤を点眼薬として開発したい場合、もし、その会社が「点眼領域」で経験が無い場合、「点眼領域」に強い製薬会社と提携して、共同開発するとかね。ざらにある。」

おかめ「そんな時にプロトコルデザインのノウハウが流出する。」

アーリータイムズ「ある意味、業界全体がプロトコルデザインの向上に寄与しているとも言える。」




おかめ「でも、失敗例もこと欠かない。」

アーリータイムズ「プロトコルデザインで、プラセボを置かなかったから、とか、対照薬の選定を間違った、というような信じられないこと新薬開発を失敗した事例もある。」

おかめ「そういう失敗事例の蓄積も、ある意味「成功」に欠かせない。」

アーリータイムズ「そうね。絶対に成功するマネジメント手法なんかありえないけれど、成功の可能性を高めることはできるわね。」

おかめ「うん。そのアプローチのひとつが『失敗を減らす』ということだものね。」

アーリータイムズ「成功事例と失敗事例を突き合わせて、真の成功要因を抽出しましょう。」





■■■ 医薬品ができるまで(治験に関する話題) ■■■
   ↓
医薬品ができるまで(治験に関する話題)


●メルマガの登録はこちら
   ↓
「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
   ↓
モニターとCRCのためのGCPメルマガ


■■■仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法 ■■■
          ↓
「仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法」の紹介サイト。


■ハードボイルド・ワンダーランド日記(半径5mから150億光年の出来事)
   ↓
ハードボイルド・ワンダーランド日記


posted by ホーライ at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新薬の開発という仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月04日

新薬開発のマネジメント(8)『プロトコル・デザイン』能力

おかめ「製薬会社は、常に、多大な利益をもたらす画期的新薬を目指して研究開発を進めているけれど、それは意図して実現できるものではないね。」

アーリータイムズ「それができたら、今頃、若者が製薬会社に就職したくて列を成しているよ。」

おかめ「たくさん作られた化合物の中で何とか上梓にこぎ着けたもののうち、さらにごく一部がそうした製品になる。」

アーリータイムズ「その意味では、より効率的な研究開発を基礎として、できるだけ多くの新薬開発プロジェクトに取り組むことが、マネジメント上、極めて重要と言えるわね。」

おかめ「それが競争優位の構築にも結び付く。その基礎を提供する主たる要因のひとつがデシジョン能力と言える。」




アーリータイムズ「新薬開発において、さらに競争優位に貢献するもうひとつの要因は『プロトコル・デザイン』能力だと思うね。」

おかめ「治験を生かすも殺すもプロトコル次第だわね。」

アーリータイムズ「そうそう。プロトコルのデザイン次第で治験が失敗したり、開発期間が長期化することもままある。」

おかめ「プロトコルには、臨床試験の対象や方法に関して、設定すべき要素がたくさんある。」

アーリータイムズ「選択基準、除外基準、プライマリーエンドポイント、観察項目・・・・等など。」

おかめ「何をもって効果が現れたと評価するか、によって治験の結果の解釈は変わってくるぐらいだ。」

アーリータイムズ「プロトコルのデザインが不適切だった場合、本来は有効だったかもしれない治験薬を開発中止と判断するかもしれない。」

おかめ「その意味では、プロトコルデザインはデシジョンに影響する重要な要因だわね。」

アーリータイムズ「さらに、適切なプロトコルを立案できなかった場合、治験の実施期間にも影響が出る。」

おかめ「そうね。例えば、用量設定。用量は多すぎると安全性に問題が出るし、少なすぎると有効性が示せない。」

アーリータイムズ「そうなると、至適用量検索試験を繰り返さないいけない。」

おかめ「データが不十分だったら、新薬承認申請後に厚生労働省から、データの追加を要求されるしね。」

アーリータイムズ「それだけ重要なプロトコルを誰が作っているの?」





■■■ 医薬品ができるまで(治験に関する話題) ■■■
   ↓
医薬品ができるまで(治験に関する話題)


●メルマガの登録はこちら
   ↓
「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
   ↓
モニターとCRCのためのGCPメルマガ


■■■仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法 ■■■
          ↓
「仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法」の紹介サイト。


■ハードボイルド・ワンダーランド日記(半径5mから150億光年の出来事)
   ↓
ハードボイルド・ワンダーランド日記



posted by ホーライ at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新薬の開発という仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月03日

新薬開発のマネジメント(7)製薬企業の研究開発の成果指標

おかめ「新薬の開発では、新薬と人間の体との関係が複雑だから、『実際に試してみる』という『人体実験』が必須だ。」

アーリータイムズ「そうね。事前の予想が昔に比べればはるかにできるようになったけれど、どうしても最後は『人間の体』で試さないと、だね。」

おかめ「だから、化合物と人間の体との関係を知るために治験が必要になってくる。」

アーリータイムズ「動物や人間を対象として、実際に試して、学習して、そこからしか、少しずつノウハウや知識、経験を積むことができない。」

おかめ「そうなると、どれだけ治験を実施したか、という実績が物を言う、という場面も出てくるわけだ。」

アーリータイムズ「製薬企業の研究開発の成果指標として、『新薬上梓数』があるね。」

おかめ「うん。あるね。」

アーリータイムズ「大手製薬企業でも、コンスタントに新薬を上梓することは難しくて、新薬の上梓自体が重要な経営目標になっている。」

おかめ「うん。その通り。どれだけ新薬を世の中に出せるか、って我々(業界人)も注目している。株主に限らず。」

アーリータイムズ「実際、日本で医療用医薬品の研究開発を手掛けている会社はだいたい80社ぐらいだけれど、新薬として承認される数は年間十数品目程度だ。」

おかめ「厳しい現実ね。1社当たりでは数年に1つ新薬が出ればいいほうだ。」

アーリータイムズ「モニターを10年やっていますが、まだ新薬を出したことがありません、なんていうのはザラだからね。」

おかめ「その新薬上梓数を成果指標とした場合、治験を進めるか、否かのデシジョン能力はどう影響するの?」

アーリータイムズ「治験を進めるか、否かのデシジョン能力は、膨大な費用が必要とされる臨床開発フェーズ後半において、いかに見込みのない化合物を先に進めないか、を実現する上で重要だ。」

おかめ「そうね。つまり、デシジョン能力は、直接的には臨床開発費用の削減に貢献するわけね。」

アーリータイムズ「その費用削減が、間接的に新薬上梓数の増加に貢献する。」





■■■ 医薬品ができるまで(治験に関する話題) ■■■
   ↓
医薬品ができるまで(治験に関する話題)


●メルマガの登録はこちら
   ↓
「モニターとCRCのためのGCPメルマガ」
   ↓
モニターとCRCのためのGCPメルマガ


■■■仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法 ■■■
          ↓
「仕事の基本、仕事の成功方法 自己啓発の方法 才能を伸ばす方法」の紹介サイト。


■ハードボイルド・ワンダーランド日記(半径5mから150億光年の出来事)
   ↓
ハードボイルド・ワンダーランド日記



posted by ホーライ at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新薬の開発という仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする