2011年09月30日

新薬開発のマネジメント(6)新薬開発のアプローチ

おかめ「新薬を開発する場合、2つのアプローチがあると思うの。」

アーリータイムズ「たとえば?」

おかめ「絶対成功すると思われる化合物だけを絞って、治験を行う、というのが1つね(タイプ1)。」

アーリータイムズ「なるほど。2つ目は?」

おかめ「幅広く、いろんなタイプ、様々な分野の新薬を同時並行で開発する、というもの(タイプ2)。」

アーリータイムズ「う〜ん。その2つのタイプのどちらかになるかと言えば、企業の規模によりそうね。」

おかめ「そうだね。製薬会社の規模が小さいと少数精鋭のタイプ1に必然的になる。」

アーリータイムズ「それはそれでいいんじゃない?」

おかめ「うん。狙い目さえ当たれば、ベンチャー企業も大企業に伍することができる。」

アーリータイムズ「ランチェスターの法則にあるからね。」
     ↓
http://www.mitsue.co.jp/case/marketing/04.html


おかめ「どんなに弱者でも、一点に絞り込んで攻めれば、強者に勝てる、というやつだね。」




おかめ「ただ、1つ目のアプローチだと、本来、上梓可能かもしれない化合物も落としてしまう可能性があるけれど、まぁ、二兎を追う者一兎を得ず、ということもある。」

アーリータイムズ「2つ目のタイプは詳しく言うとどうなるの?」

おかめ「治験でフェーズ2までは比較的、多方面の領域の新薬開発を行い、フェーズ2の結果を見て、成功しそうな治験薬を絞り込み、確実性の高い化合物だけをフェーズ3に持っていく、というもの。」

アーリータイムズ「フェーズ2までとは言え、多方面に網をかける資金力が必要だから、大企業じゃないとできないわね。」

おかめ「さらに、この2つのタイプは実は意外な面で異なる効果があるんだよね。」

アーリータイムズ「どういうこと?」

おかめ「たとえばさ、少数精鋭タイプの戦略1では、入口で『絶対的に成功するもの』に絞りこむため、臨床試験を実施する化合物が少ない。」

アーリータイムズ「当然、そうなるわね。」

おかめ「それに対して多方面を攻める戦略2では、途中で開発中止になることを織り込んで手広くやっているので、戦略1よりも多くの新薬開発プロジェクトを経験できる。」

アーリータイムズ「無駄が多いとも言えるけれど・・・・・・。」

おかめ「いやいや。もちろん、大部分はフェーズ2までしか治験ができない(途中で開発中止になることがある)けれど、この段階まで進めることで、実際に患者さんを対象とした化合物の治験ができるわけだ。」

アーリータイムズ「うん。」

おかめ「そうなると、その結果、新薬開発において最も重要な要素である『新薬開発を進めるか、否か』という判断について様々な知識と経験が積める、とも言える。」

アーリータイムズ「なるほどね。それは結構、大きいわね。」



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2011年09月29日

新薬開発のマネジメント●新薬開発の業界で働くということ

りら「新薬はサイエンス型とか知識集約型とも呼ばれるように科学技術と密接な関係がある。」

通りすがりのお方「でも、その研究開発プロセスをみれば、体系的とはほど遠い泥臭い側面が多くあるね。」

りら「特に探索段階では新規化合物の発見確率は数千分の1と極めて低く、不確実性が高い。」

通りすがりのお方「偶然や幸運が成功に大きな影響を与えるね。」

りら「2番目の特徴は、研究開発が個人研究者を中心に行われている、というものがある。」

通りすがりのお方「新薬開発の下流(臨床試験等)では、探索段階とは違って、研究開発活動はより組織的かつ体系的に行われるよね。」

りら「この治験等をどのようにマネジメントするかが、研究開発成果や競争優位に決定的な差をもたらすことになる。」

通りすがりのお方「治験段階で競争優位の源泉となっている第一の要因は「go or no-go」の判断能力だ。」

りら「CDP(Clinical Deveropment Plan)を作る会社も多いね。そこで治験の開発戦略が練られている。」

通りすがりのお方「開発途中の治験薬を次の段階に進めるかどうかの判断が重要だ。」

りら「これは探索段階に比べるとはるかに組織的に行われる。」

通りすがりのお方「それも、研究開発部門だけではなく、マーケティング、生産、渉外など各部門のトップが参加する最高意思決定機関で判断が行われるね。」

りら「この「go or no-go」の判断能力が競争優位に影響するのは、開発プロセスの途中から医薬品では「設計変更」ができなくなるからだ。」

通りすがりのお方「たとえば自動車やパソコンの開発では、解決されるべき多数の問題をひとつずつ解決していく、ということが普通に行われる。でも、新薬の場合、開発プロセスの途中から設計変更ができなくなる点が特徴だ。」

りら「化合物が臨床試験の段階に入ったら、化合物の構造を変えることは不可能だ。」



りら「競争の観点からとらえれば、医薬品市場は、薬効ごとにセグメント化された市場の集まりだ。高血圧の薬では癌が治らないように、ある薬は他の薬効を代替できない。」

通りすがりのお方「どんなに優れた医薬品であっても、全ての市場に参入することはできない。だから、製薬企業は「医薬品」という単一市場ではなく、ガン、高脂血症、アレルギー等といった薬効・作用ごとに互いに競合し、激しい開発競争を繰り広げている。」

りら「そして、市場性という点からすれば、薬効領域ごとに上市順位が数番目以内でないとビジネスにならない。」

通りすがりのお方「やれやれ。大変な業界に入ったというわけだ。」

りら「でも、繰り返すけれど、やりがいのある仕事だよね。」

通りすがりのお方「そういうこと。さ、コーヒーでも飲みにいこ。」




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2011年09月28日

新薬開発のマネジメント●新薬開発に必要なものは?(3)

りら「その他に新薬開発に必要なことは?」

通りすがりのお方「そもそも会社が設定した「研究テーマの方針」が適切であることも重要だ。」

りら「メバロチンを開発するに際して、三共は新薬の重要なリソースの1つとして微生物に注目していた。」

通りすがりのお方「微生物の代謝産物が様々な生理作用を有することが分かっていたからね。」

りら「そこで、三共としては「微生物から新薬を開発する」という方針が設定されていた。」

通りすがりのお方「そういう会社方針と科学者の興味が重なると幸運が舞い込む。」

りら「低い確率の下で効率的な研究開発を行うためには、筋の良い研究テーマ方針を選定することが不可欠だ。」

通りすがりのお方「特に最近では、新薬開発により大きな費用がかかる傾向があり、大手製薬会社といえども全ての薬効領域をカバーすることは難しい。」

りら「研究テーマの方針をどう設定するか、その判断は研究開発成果に影響を与える重要なポイントの1つだ。」


通りすがりのお方「探索研究のマネジメントにはどういう特徴があると思う?」

りら「ひとつは、この段階の成功のほとんどがプロジェクトリーダーを中心とした個人研究者の能力・努力によるものだね。」

通りすがりのお方「つまり粘り強い研究とコミュニケーション、情報収集だ。」

りら「研究の自由度と同時に研究方針は、企業が戦略や研究開発システムとして設定し、マネジメント可能な要因だ。」

通りすがりのお方「それにしても、探索段階をマネジメントできるか、というと、それって案外難しい。」

りら「ひとたび、研究開発が開始されたあとでは、その成果は研究者個人の能力の依存する部分が大きく、組織管理的なマネジメントの役割は限定されるってわけだ。」

通りすがりのお方「組織マネジメントの関係で、医薬品開発に特徴的なのは、部品間の相互依存関係の問題が生じないってことだ。」

りら「そうだね。たとえば自動車ではエンジン、ボディ、サスペンションなど多様な部品から構成されているけれど、各部品の間に相互関係がある。」

通りすがりのお方「それに対して新薬開発では、合成やスクリーニングといった研究活動は基本的に個人レベルで完結する。」

りら「それにしても研究者個人の能力に依存するのが新薬開発なのね。」





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2011年09月27日

新薬開発のマネジメント●新薬開発に必要なものは?(2)

りら「新薬開発に必要なことでその他には?」

通りすがりのお方「さっきも言ったけれど、プロジェクトリーダーを支援する上司が必要だね。」

りら「一般にイノベーション成功のためには、支援する上司とプロジェクトリーダーがセットで必要だ。」

通りすがりのお方「画期的であればあるほど、周囲からのプレッシャーが重圧としてるからね。どうしたって上司の支えや擁護が必要だね。」

りら「研究開発上流の基礎的な段階では、そもそも、成果が出るまでには時間がかかるし、どのテーマが将来成功するかは事前に予測がつきにくい。」

通りすがりのお方「だから、プロジェクトには必ず「期限」がつくのよね。」

りら「それとは別のアプローチ方法がある。」

通りすがりのお方「どんな?」

りら「たとえば3Mが採用していることで有名な「15%ルール」というのがある。15%ルールとは研究者や技術者自身が「ビジネスとして役立つだろう」と考えるものであれば、自分に課せられた研究とは別に、勤務時間の15%程度を費やしていい、というものだ。」

通りすがりのお方「1日8時間働くとして72分。1時間とちょっと、ということろね。」

りら「一定の範囲内で研究の自由度が認められることで研究者のモチベーションが高まることも見逃せない。」

通りすがりのお方「ポストイットも15%ルールの中で作られたらしいよ。」

りら「その他に、新薬開発に必要なものは?」

通りすがりのお方「積極的なコミュニケーションと情報収集が必要だ。」

りら「研究開発過程で生じる様々な問題解決のために、組織内外のネットワークを活用した積極的なコミュニケーションや情報収集だね。」

通りすがりのお方「たとえば、6000種類の菌をスクリーニングすると同時に高脂血症の情報を世界中から集める、ということも必要だ。」

りら「そうすることで、仮説が立てられるからね。」

通りすがりのお方「その仮説に基づいて、短時間で数多くのテストをすることが可能な効率的なスクリーニング系を構築することもできる。」

りら「そういう積極性が「確率」を高めることにつながる。」

通りすがりのお方「飲み屋での同僚との会話で新薬開発のきっかけがつかめることもあるしね。」

りら「要は研究者の問題意識の高さだ。」



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2011年09月26日

新薬開発のマネジメント●新薬開発に必要なものは?(1)

りら「新薬開発の特徴はどうだろう?」

通りすがりのお方「新薬開発の上流段階では、偶然や運がその成功に大きく影響している、と言ってもおかしくない。」

りら「新薬開発のために数千という微生物が調べて、「たまたま」ヒットした、ということはよく聞く話だよね。」

通りすがりのお方「時には別の領域で開発していた化合物が、他の領域で新薬のヒントになることもある。」

りら「研究者の意図とは異なる化合物が「正解」だったりして、幸運がなければ正解にたどり着けなかった可能性もある。」

通りすがりのお方「どうして、そんなことになるの?」

りら「新薬の開発では、研究者が常に科学的知識の不足した状態で開発をやらなければならないことが多いからね。」

通りすがりのお方「そもそも、なぜ、その病気が発生するのか、それすら分からない状態で新薬開発に取り組むことも多い。」

りら「大昔に比べれば、それでも科学が発達したから、全てが運任せということでもないけれどね。」

通りすがりのお方「それでもさ、たとえば、不妊治療薬を目指して作られていた化合物が前立腺がんの治療薬として強い作用が発見されたり、降圧剤が発毛剤になったりと、まだまだ、幸運は不可欠だ。」

りら「家電メーカーがアイロンを開発しようとしていたら、最終的には携帯電話ができた、という話は聞かないからな・・・・・。」



通りすがりのお方「じゃ、何もかもを運と偶然に任せていればいいの?」

りら「そうはいかないよね。」

通りすがりのお方「新薬開発に必要なのは何?」

りら「まず、資本、次に資本、最後に資本だ。」

通りすがりのお方「そうね。その他には?」

りら「プロジェクトリーダーの粘り強い、諦めの悪さも必要だね。」

通りすがりのお方「当たり前だけど、新薬の開発には数多くの問題が待ち受けている。それをあたかもプロデューサーや社内企業家のように活躍する必要がある。」

りら「必要に応じて人材を集めたり、予算をぶんどったり、周囲を説得して回る必要がある。」

通りすがりのお方「メバロチンの場合では、6000もの菌株の中からようやく見つかった候補化合物が動物試験段階で中止されそうになった時に、リーダーは自ら動物実験を行い、研究を続行させた、という話もある。」

りら「アリセプトの開発の場合だって、決められた期間内に目標とされた物質が見つからず、プロジェクト中止が宣告された時に、リーダーは必死に上司を説得し、研究継続を勝ち取ったとか。」



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