2011年06月02日

治験責任医師を訪問する(その5)プロトコル逸脱を防ぐ

アカギ「先生、こんにちわ。」

築地先生「いや、きみか。」

アカギ「はい、いつも治験にご協力頂きまして、ありがとうございます。本日は、先日のカルテの件で2,3お聞きしたい点があるのですが。」

築地先生「うん、何?」

アカギ「はい。被験者識別コード003の山田花子さんのカルテを先日、閲覧させて頂きました。そこで分かったのですが、山田さんはプレマリンを服用されている患者さんでした。」

築地先生「うん。そうだったかな。」

アカギ「はい。プレマリンを服用されている患者さんには2週間のウォッシュアウトがプロトコルで規定されています。」

築地先生「そうだっけ?」

アカギ「はい。そうなのですが、山田さんのウォッシュアウト期間が1週間でした。」

築地先生「それで?」(ムッとしている。)

アカギ「そのウォッシュアウト期間に関しまして、実は、プロトコルからの逸脱となります。」

築地先生「え?それだけで?」

アカギ「はい、そうなんです・・・・・・。」

築地先生「あのさ、プレマリンなら1週間もウォッシュアウトすれば十分だよ。」

アカギ「はい、そうかもしれませんが、今回の治験では2週間とさせて頂いております。」

築地先生「それで?」(顔が赤くなる。けれど、挫けない。)

アカギ「それで、プロトコルからの逸脱の記録を残して頂きたいのですが。。。。。。」

築地先生「すぐ、それだ。だから治験っていやなんだよな。」(ほとんど怒っている。)

アカギ「申し訳ございません。」(耐える。)

築地先生「治験はそうかもしれないけれど、臨床の現場では、プレマリンは1週間も服用しなかったら、効果が切れるよ。」

アカギ「ええ、そうかもしれません。」(決して、否定の言葉を使わない。)

築地先生「プロトコル、プロトコル、とうるさいんだよ。」(頭から湯気が出ている。)

アカギ「申し訳ございません。ただ、治験は『試験』という側面もございます。その試験のデータの質を均一にしないといけません。」(粘りに粘る!)

築地先生「それで?」

アカギ「はい、それで、実際の臨床では1週間かもしれませんが、今回は色々と検討した結果、2週間とさせて頂いております。」

築地先生「それは分かったよ。」(目的に向かって、少しずつでも妥協点を詰めていく。)

アカギ「そこで、CRFの『ウォッシュアウト期間』の所に、『本件はプロトコルからの逸脱である』とだけ、ご記入頂けませんでしょうか?」

築地先生「それだけで、いいの?」

アカギ「はい。結構です。」

築地先生「分かった。CRFに書いておくよ。」

アカギ「ありがとうございます。それと先生、今回ウォッシュアウト期間を一覧表にしたポケット資料を作りましたので、こちらをご覧いただきまして、今後はこちらの期間のウォッシュアウトをお願い致します。」(必ず、プロトコルの逸脱の再発防止策を講じ、それをモニタリング報告書に記載しておくこと。)

築地先生「分かった。」

アカギ「それでは、そのCRFの作成ですが、いつ頃、可能でしょうか?」

築地先生「そうだな・・・・。」(1回のアポで1つの目的だけとせずに、常に症例エントリー、CRFの作成などの話題を必ず提示する。)


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2011年06月01日

治験責任医師を訪問する(その4)CRF作成のプッシュ

アカギ「こんにちわ、ホーライ製薬のアカギです。」

築地先生「いや、どうも。」

アカギ「先生、更年期障害治験の件ですが。」

築地先生「うん。何?」

アカギ「今、先生には患者さんを3例、登録して頂いており、終了しております。ありがとうございます。」

築地先生「うん。それで?」

アカギ「はい、実はそろそろCRF(Clinical Report Form:症例報告書)の作成をお願いしたいのですが。」

築地先生「そうだね、、、そのうち書いておくよ。」



アカギ「先生、できましたら、今月中にお願いしたいのですが・・・・」(実は上司から、今月中に絶対に3例分、回収するよう指示されている。)

築地先生「あ、今月は無理。」

アカギ「そこをなんとか・・・・・・。」



築地先生「いや、来月10日に学会があって、その準備で忙しいだよね。」

アカギ「あ、学会ですか。更年期障害学会ですね。私も参加予定です。」

築地先生「ふ〜〜ん、そうなの。」

アカギ「先生、1例でもいいのですが・・・・・・・。」(とりあえず、1例だけも書いてもらうようにする。人間は一度「Yes」というと、その後「Yes」を言いやすくなる。また、1例だけも書くと、意外と「なんだ、簡単だな」と思って「じゃ、2例目もついでに書くか、」と思うことも多い。)

築地先生「1例ね・・・・・・。」



アカギ「私もCRF作成方法の説明でおつきあいします。詳しい書き方マニュアルもご用意してあります。」

築地先生「そうは言ってもさ、平日は時間が無いのよ。」

アカギ「でしたら、土日や夜勤のときはいかがでしょうか?」(粘る。簡単にあきらめない。)

築地先生「土日はプライベートだからダメだけど、夜勤の時なら・・・・・。」

アカギ「ありがとうございます!先生、夜勤はいつでしょうか?」(すかさず、アポを取る。)

築地先生「毎週、金曜日だけど。」

アカギ「では、今週の金曜日はいかがでしょうか?」


築地先生「そうね・・・・・・。」

アカギ「1例だけでもお願いします!」(とりあえず、1例を確保する。)

築地先生「分かった。じゃ、1例だけね。」

アカギ「はい、お願いします! ところで症例のエントリーはいかがでしょうか?」(1回のアポで1つの目的だけとせずに、常に症例エントリー、CRFの作成などの話題を必ず提示する。)

築地先生「う!イヤなことを聞くな・・・・・。」

アカギ「患者さんはいらっしゃいますか?」

・・・・・・・・・




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