2007年02月01日

GCP不遵守に対応する

アブラハム「困った病院があって、どうしよう?」

薬作り職人「どう困った病院なんだい?」

おきょう「重篤な予測できない副作用の情報をIRBに提出したんですけれど、きちんと審議してくれないんです。」

へい太郎「え!放置されるの?」

ゆ「いえ、イチオー『迅速審査』で審査しているんですけれど・・・・」

あんころ「でも、迅速審査って、そんな重要なことの審議には使えないんでしょう?」

Binobin「ええ、軽微なものだけですね。」



(参照:GCP省令(治験審査委員会の構成等)第28条の運用通知

治験審査委員会により既に承認された進行中の治験に関わる軽微な変更に関して、迅速審査と承認を行う場合の条件(迅速審査の適用範囲、判断する者、審査方法、次回に開催される治験審査委員会への報告等)を定めること。

なお、この場合の「進行中の治験に関わる軽微な変更」とは、治験の実施に影響を与えない範囲で、被験者に対する精神的及び身体的侵襲の可能性がなく、被験者への危険を増大させない変更をいう。具体的には、治験依頼者の組織・体制の変更、治験の期間が1年を越えない場合の治験契約期間の延長、実施(契約)症例数の追加又は治験分担医師の追加・削除等が該当する。)



ゆうこ「で、迅速審査だけやって、その後に通常の審査はやってくれないの?」

ムーミン「はい、申し入れしたんですが、だめなんです。これがその時のモニタリング報告書です。」

アロウ「そのGCPの運用通知も見せた?」

かりん「見せましたが、うちはうちだから、という話で・・・。」

アーリータイムズ「重篤な予測できない副作用情報をきちんと審議していないってことは、IRBの責務をまっとうしていないってことになるわよね。」




(参照GCP省令(継続審査等)第31条

2 実施医療機関の長は、第20条第2項、第26条の6第2項並びに第48条第2項及び第3項の規定により通知を受けたとき、第54条第3項の規定により報告を受けたときその他実施医療機関の長が必要があると認めたときは、当該実施医療機関において治験を継続して行うことの適否について前条第1項の規定により意見を聴いた実施医療機関等設置治験審査委員会の意見を、当該治験を継続して行うことの適否の判断の前提となる特定の専門的事項について前条第4項の規定により意見を聴いた専門治験審査委員会がある場合にあっては当該専門治験審査委員会の意見を聴かなければならない。




おかめ「事務局の方は、こんなに膨大な資料をいちいち審議できるか、と言っていました。」

通りすがりのお方「そうなの?その今回の副作用情報はどの程度の資料なの?」

りら「A4で3ページとA3の資料が2ページです。」

なつきさんのお嬢さん「それで膨大?」

チビ姫「一社だけじゃないから、ということなんでしょうね。」



パチョレック池上「どうします?これって、そのまんま治験依頼者のポリシーの問題になりそうですが。」

モニ太郎「そこの施設ではもう治験が始まっているの?」

りんご姫「ええ。3人の創薬ボランティアが入っています。」

捨て猫「じゃ、まず治験責任医師から、そのボランティアの方に副作用情報を伝えて治験を継続するかどうかの確認をとってもらいましょう。」

べのした「同意説明文書も改訂して、IRBで審議をお願いする。もし、それも審議してもらえないなら、もうその施設の治験は打ち切りだね。」

有馬街道「仮に同意書を審議してもらっても、早々に、その施設の治験は中止すべきじゃない?」

バカボン「そうね、治験責任医師に事情を伝えて、新規の患者さんは登録しないようにして、今の創薬ボランティアも安全性をなどを考慮しつつ、治験を中止にしてもらよう治験責任医師にお願いしましょう。」

小桑院「治験責任医師はそんなことを承知しますかね。」

さくら「事情を話して、もし、治験責任医師からIRBに副作用情報を迅速審査でなく、通常の審査もやるように話をもちかけてもらって、それで了承されればOKだし、ダメなら、やっぱり、止めましょう。」

博多小町「それって、医療機関の長にも報告するんですよね?」




(参照GCP省令(治験の中止等)第24条
 
治験依頼者は、実施医療機関がこの省令、治験実施計画書又は治験の契約に違反することにより適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合(第46条に規定する場合を除く。)には、当該実施医療機関との治験の契約を解除し、当該実施医療機関における治験を中止しなければならない。

2 治験依頼者は、治験を中断し、又は中止する場合には、速やかにその旨及びその理由を実施医療機関の長に文書により通知しなければならない。)




カルシファー「そうね。治験責任医師が提出する治験の終了報告書(この場合は中止の報告書)に、中止理由としてIRBによる安全性情報が適切に審議されないため、という旨を書いてもらうしかないわね。」

かぐや姫「あとさ、規制当局にも報告するんでしょ?」




(参照GCP省令(治験の中止等)第24条の運用

1 治験依頼者は、モニタリング及び監査によって治験責任医師、実施医療機関又は治験に係るその他の施設による重大又は継続した不遵守が発見された場合には、当該治験責任医師、実施医療機関又は治験に係るその他の施設の治験への参加を打ち切らなければならない。なお、不遵守のため治験責任医師、実施医療機関又は治験に係るその他の施設の参加を打ち切った場合には、治験依頼者は規制当局に速やかに報告するものとする。)




百年の孤独「それはそうだけど、いきなりだと、のちのち怖いから(何が?^^;)、治験の総括報告書に中止理由としてあげておけばいいよ。」



Atsu-4「それにしても、治験依頼者側もさ、メリハリのある報告をしないといけないね。絶対に審議してもらいたいものだけ、報告しないとね。」

まきろん「何でも報告するという態度は良くないよね。まるで自分の責任を放棄するようなもんだ。」

フラワー 「そうよね。治験事務局やIRB事務局の人たちも努力しているんですものね。」


*この物語はフィクションです。


架空の製薬会社「ホーライ製薬」
http://horaiseiyaku.web.fc2.com/


治験と臨床試験を考える「医薬品ができるまで」
http://iyakuhin.web.fc2.com/index.html

posted by ホーライ at 15:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする